研究領域 | 生体防御における自己認識の「功」と「罪」 |
研究課題/領域番号 |
23H04790
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
横須賀 忠 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (10359599)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | キメラ抗原受容体 / T細胞受容体 / 免疫シナプス / 分子イメージング / シグナル伝達 / CAR-T細胞 / シグナル伝達分子 / マイクロクラスター / 自己抗原 / 共受容体 / MHC |
研究開始時の研究の概要 |
ユニバーサルCAR-T細胞療法の展開が進められている。一方、TCRが内在性リガンドを認識する微弱なシグナルは、T細胞のホメオスタシスに必須である。予備実験から、CARが抗原と結合する際、CAR-T細胞上の内在性TCRも自己ペプチドを認識しクラスター形成することを明らかになった。このシグナロソームが、CAR-T細胞の細胞傷害活性亢進や記憶CAR-T細胞維持に貢献するか、T細胞疲弊を誘導するか、1細胞1分子イメージングとin vivo実験を行い、CAR-T細胞に発現する内在性TCRの「功」と「罪」を検証すると共に、CARを通して初めて可視化されたTCRの自己の認識とT細胞応答性の理解を目指す。
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研究実績の概要 |
CAR-T細胞療法のユニバーサル化には、iPSからの分化誘導やTCR欠損などの選択しがある一方、TCRを欠損させた場合、TCRによる内在性リガンドつまり自己ペプチドとMHCの認識と、T細胞のホメオスタシスに重要なそこから伝えられる微弱なシグナルが喪失することになる。我々が概念化したTCRシグナロソームがCARにも適応できるか、CARが抗原と結合する際に形成されるクラスターが機能的分子を内包するか、また、TCRよりも陽香に強力な親和性を持つCARの場合は、逆にTCRが補助刺激受容体として機能するかの検証を目的とした。方法論とし、1細胞1分子イメージングとin vivo実験を組み合わせることで、シグナロソームのデジタルアウトプットと生理機能応答を比較検討し、CAR-T細胞に発現する内在性TCRの「功」と「罪」を考察する。2023年度は、ヒトCD19(hCD19)CAR-T細胞が抗原hCD19を認識する際、TCRと同様にクラスター化すること、またCARのリン酸化にはLckが必須であり、効率の良いCARのリン酸化には、共受容体CD4/CD8とMHC ClassII(MHC-II)とClassI(MHC-I)の両者が発現する必要のあることを新たに明らかにした。CD4-Lckのクラスター形成は極軽度であったが、1細胞1分子解析から、CD4とMHC-IIが同時に発現することで、CD4とLckがTCRマイクロクラスター内での停滞時間が延長すること、また同様にLckも同クラスターで運動性が低下することを明らかにした。CD8+T細胞においても、Lckの停滞時間は、CD8とMHC-Iの存在下にて延長した。現在、CAR-CD4/CD8-MHC-II/MHC-Iの三量体構造にTCRが関与するか、2024年度の実験を計画しており、内在性以降現を認識するTCRがCAR-T細胞の細胞傷害活性亢進や記憶CAR-T細胞維持に貢献するか、CARの持続的リン酸化によるT細胞疲弊を誘導するかの解明を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TCRリン酸化に対する共受容体CD4/CD8とLckの寄与に関して、CD4+T細胞ではTCRシグナロソームの形成と同リン酸化にCD4の寄与は少なく、一方、CD4とLckとの発現は必須でありTCRマイクロクラスターへのCD4の微弱な凝集も認められたことから、CD4-Lckの一過性のTCRへの共局在で十分なTCRシグナルの活性化が惹起されることが明らかとなった。CD8+T細胞においては、CD8abの発現なしにはTCRマイクロクスターの形成も可視化できず、またTCRシグナルも非常に微細なものであった。また、CD8abが発現している場合でもCD8aとLckとのZn2+を介したキレート結合が喪失した場合はTCR-CD8abシグナロソームの形成はなく、細胞内のLckがシグナロソームの基盤として機能していることが示唆された。CD4-Lckシグナロソームができているか、解像度の限界で検証するため、1細胞1分子イメージングにて、CD4とLckの挙動を解析したところ、CD4分子でもTCRマイクロクラスター内ではランダムな動きが制限され、停滞時間が延長すること、また同様にLckも同クラスターで運動性が低下することが明らかになったが、CD4とMHC-IIが同時に発現することが条件であった。CD8+T細胞においても、Lckの挙動は、CD8とMHC-Iの存在下にてTCRマイクロクラスター内での運動制限が起き、この停滞時間の延長がTCR/CD3複合体の初期のリン酸化に必要なDurationであることが予想された。これらの予備実験から、内在性TCRが自己抗原ペプチド+MHCと結合し形成する1分子会合および微細なシグナロソームが、CAR-T細胞のCAR下流のシグナル伝達に寄与するか、CAR-T細胞機能の「功」となり得るか、2024年度の実験計画に加えて検証を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
hCD19 CAR、hCD5 CAR、ジアシグガングリオシドDG2 CARそれぞれとCD4/8abおよびLckが同時に解析できるガラス平面支持脂質二重膜SLBの実験系を作製し、1細胞1分子解析にて各分子の挙動をデータ化する。各リガンドを導入したSLBを作成し、、用いるT細胞に拘束性のあるMHC-II/MHC-Iハプロタイプを導入し共焦点レーザー顕微鏡および超解像全反射蛍光顕微鏡で画像取得する。内在性リガンドのみで内在性TCRの挙動に変化がみられた場合は、1細胞1分子イメージングにて、Lckの分子の動きに変化が起こるMHCおよびCD4/CD8abの条件を検討する。また、内在性TCRとしておよびAND TgおよびOT-I Tgを用い、それぞれI-EkおよびH-2Kbに対するAPLからTCRに対する親和性の違いを系統的に解析し、Lckの運動性低下におけるMHCおよびCD4/CD8abの寄与を定量的に算出する。実験は第一世代のCARで行うが、Lckとの会合が確認されている補助刺激受容体CD28をキメラ分子とする第二世代CARに関して、CAR-ICOS.z、CAR-4-1BB.zをコントロールとし、CAR-CD28.zと内在性TCR-MHC-CD4/CD8abシグナロソームが更にLckの停滞時間を延長さえるか比較検討する。準備している。その場合の内在性TCRマイクロクラスターの形成の差を確認する。イメージング解析と併行し、CAR-T細胞の細胞傷害活性をより生理的な条件かつin vivoで確認するため、TCRa鎖欠損floxをタモキシフェンTAM誘導で欠損させるマウスをホストにCAR-T細胞を作製、内在性T細胞を欠失させた際のCARの抗腫瘍効果をhCD19発現リンパ腫細胞をモデル腫瘍にin vivoでの検証を行う。またTAMの経口投与のタイミングにより、いつTCRが必要なのか、腫瘍除去後のメモリーCAR-T細胞の維持には内在性TCRは有用なのか、臨床的視点からのCAR-Tのin vivo解析を進める。
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