研究領域 | 生体防御における自己認識の「功」と「罪」 |
研究課題/領域番号 |
23H04792
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
北村 大介 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 教授 (70204914)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | IgE / 共生細菌 / Th2 / 自然感作 |
研究開始時の研究の概要 |
肺の細胞において、何らかの免疫センサーがMyD88を介してある種の共生細菌を認識し、それによりTh2型自然感作が抑制され、IgE自然抗体産生が抑止されていることを私たちは見出した。しかし、自己の一部とも言える膨大な共生細菌の中で病原性細菌を見分けて免疫応答や炎症を誘導しているはずの免疫センサーが、どうやって共生細菌を認識し、Th2応答を抑止して免疫恒常性を維持しているのかは大きな謎である。この謎を解明したい。
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研究実績の概要 |
乳児期からIgE自然抗体(nIgE)を高産生するMyD88欠損マウスにおいて、肺の特定の共生細菌(S. Azizii)がTh2免疫応答を誘導し、形成された記憶B細胞が長期のnIgE産生を担うことを見出した。その責任細胞が肺の非血球系細胞であったことから、正常では肺の細胞がMyD88シグナルを介してTh2反応を抑制していると考えられた。本研究は、自己の一部と言える共生細菌を認識し、MyD88を介して免疫応答を抑制している機構の解明を目的としている。 これまでに、MyD88欠損および対照マウスの肺の非血球系細胞についてsingle cell RNA-seq解析を行った結果、線維芽細胞や内皮細胞では発現に差があるいくつかの遺伝子が見出されたが、細胞数が非常に少ない気道上皮細胞では有意なデータは得られなかった。一方、肺の非血球系細胞を用いたRT-PCR解析の結果、CSF1の発現がMyD88欠損マウス肺で増加していた。このマウスの肺ではCSF1受容体陽性のcDC2樹状細胞が増加しており、CSF1阻害抗体投与によってこの細胞とTh2細胞が減少し、血清IgE濃度も低下した。以上より、CSF1過剰産生がTh2応答誘導の原因であり、正常の肺ではMyD88依存的にCSF1の発現が抑制されていると思われた。このCSF1発現抑制機構を解明するために、CSF-1を発現するヒト気管上皮細胞株BEAS-2Bを用いて種々の遺伝子の発現を解析した。炎症性サイトカイン等幾つかの遺伝子はLPS刺激により発現が亢進し、それはMyD88阻害剤により抑制された。しかし、CSF1遺伝子については定常状態およびLPS刺激後の発現がいずれもMyD88阻害剤により亢進した。よって、MyD88を介したCSF1発現抑制機構解析の良いモデルであると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肺の2型上皮細胞特異的にMyD88欠損を誘導できるマウス(CCSP-rtTA-Tg, tetO-Cre-Tg, MyD88-floxed)を解析してそのメカニズムに迫る計画であるが、対照マウスも含めて実験に必要な数のマウスを揃えるに至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
Single cell RNA-seq解析の結果を参考にして、BEAS-2B細胞を用いてCSF1発現抑制機構を解析する。MyD88阻害剤に加えMyD88ノックダウンを行い、CSF1発現を制御する遺伝子を同定し、その作用機序を解明する。 また、肺の2型上皮細胞特異的にMyD88欠損を誘導できるマウス(CCSP-rtTA-Tg, tetO-Cre-Tg, MyD88-floxed)および対照マウスを必要数準備し、これにドキシサイクリンを投与し、その後に肺の血清IgE濃度を測定し、全身MyD88欠損マウスのフェノタイプの再現性について調べる。また、肺におけるCSF1の発現やcDC2、Th2等の細胞についてのフローサイトメトリー解析を行う。
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