研究領域 | 光の極限性能を生かすフォトニックコンピューティングの創成 |
研究課題/領域番号 |
23H04802
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
庄司 雄哉 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (00447541)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 光ニューロン / 光磁気変換 / 磁気光学効果 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、光と磁気の相互変換を利用した導波路型のスパイキング光ニューロン素子を実現する。リング共振器の外周に配置した磁性体において入力光によって磁化反転を与える。この磁化反転はリング共振器内に磁気光学効果を誘起し、入力光の信号強度の積算量に応じて非線形に応答することから、読み出し光に対してニューロンの発火現象(スパイキング)を再現できる。
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研究実績の概要 |
本研究は、光と磁気の相互変換を利用した導波路型のスパイキング光ニューロン素子の実現を目的としている。リング共振器の外周に配置した磁性体シナプスにおいて入力光によって磁化反転を与える。このシナプスは入力パルスの生じる発熱に対して蓄積と放熱効果を示し、ある臨界点以上の温度で磁化反転を生じる。このダイナミクスが、スパイキングニューロンに用いられるLeaky Integrated and Fire(LIF)モデルを物理的に模倣できると考えられる。シナプスの磁化反転によりリング共振器内に磁気光学効果を誘起し、入力光の信号強度が非線形に応答することから、読み出し光に対してニューロンの発火現象(スパイキング)を再現できる。 今年度、このLIFモデル動作の原理検証を行った。シリコン光導波路上に磁性体シナプスとなるCoFeB薄膜を形成したデバイスを準備し、光パルス列の入力に磁化反転を評価した。複数の光パルスの数や間隔を変えて評価を行い、熱の蓄積効果に由来する磁化反転のタイミングの変化を実験的に観測することに成功した。この成果について、現在論文投稿中である。 また、リング共振器の外周に磁性体を配置したデバイスの透過率変化についても並行して検証を行った。磁気光学材料Ce:YIG上のアモルファスシリコン導波路でリング共振器を作製した。外部磁場の掃引方向に対するヒステリシス的な非対称な応答が観測され、磁性体の磁化保持動作を確認することができた。これらの検討結果について成果発表した学生が、電子情報通信学会ソサイエティ大会で学術奨励賞を受賞する評価を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のポイントは2点あり、光パルス列によるLIFモデルを再現した磁化反転と、磁化反転による磁気光学効果の変化を利用した光スパイクの生成である。今年度、前者の動作実証として、複数の光パルスの数や間隔を変えて評価を行い、熱の蓄積効果に由来する磁化反転のタイミングの変化を実験的に観測することに成功した。50 ns幅の光パルスを2~4つ連続して生成し、そのパルスの間隔を10 ns~500 nsに変化させてその違いを評価した。まず間隔が狭いほど磁化反転が観測され、熱の蓄積効果の証明となる。また、パルス数も2、3、4つと多くなるほど、広いパルス間隔でも磁化反転が観測され、熱が蓄積されることで磁化反転が誘起されることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
リング共振器の外周に磁性体シナプスを配置したデバイスの作製を検討する。これまでのアモルファスシリコン導波路の場合、基板全面にCe:YIG層があるため、リング内の磁化方向の制御が難しく、CoFeBの磁化応答が不安定であることが確認されている。そこで、スパッタ法とアニーリングを用いたCe:YIGの多結晶堆積プロセスの条件出しを進め、Silicon-on-insulator(SOI)ウエハ上に作製した光デバイスを作製する。入力光による磁化反転とリングの透過率変化による光スパイク生成を目指す。
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