研究領域 | マクロ沿岸海洋学:陸域から外洋におよぶ物質動態の統合的シミュレーション |
研究課題/領域番号 |
23H04820
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅳ)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤原 泰 神戸大学, 海事科学研究科, 助教 (60963569)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 波流れ相互作用 / 波浪 / 数値シミュレーション / ストークス輸送 / 波と流れの相互作用 / 沿岸海洋循環 / 海洋モデリング / 海洋表層流 |
研究開始時の研究の概要 |
波浪は海面付近の水をその伝播方向に輸送する働きをもつ(ストークス輸送)。さらに地球の自転効果がストークス輸送を打ち消すセンスの流れを生じさせ、結果複雑な流れの分布が生じる。この過程を海洋数値モデルに適切に実装することで海況予測精度が向上すると期待できる。 本研究では、ストークス輸送及び反流応答を海洋モデルに実装する適切な方法を明らかにすることを目指し、波を直接表現する流体数値計算を用いて反流形成過程を詳細に調査する。まず波が反流を駆動する力の理論的な予測モデルの有効性を直接計算によって検証し、続いて数m~数百m規模の流れとの相互作用の数値実験から実用的な海洋モデルへの実装法を提案する。
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研究実績の概要 |
1年目の研究を開始するにあたり、まず注目すべき問題設定を明確化した。検討の結果、沿岸海洋における岸沖方向水交換への波浪の寄与を解明すべく「岸に対し垂直に押し寄せるストークス輸送の場に対するオイラー流の応答」の理解を目指すこととした。 まず自身の開発した波解像数値モデルを駆使し、造波水槽を模したような非回転・非粘性・鉛直二次元の状況においてストークス輸送への反流がどう生じるかの理想化数値実験を行った。反流は鉛直積算したストークス輸送の場をほぼ同時に打ち消すような順圧流として生じていた。さらなる解析・波平均計算による追加実験の結果、この反流はストークス輸送の水平収束によって生じる水面凹凸を平坦にするべく生じており、すなわち重力波応答として理解できるとわかった。 並行して、「コリオリ・ストークス力」や「ストークス輸送収束項」といった項の有効性実証した。 続いて、地球自転の影響を受けた状態での反流過程の解明に取り組んだ。上記の項を実装した波平均数値モデルをもちいて、波の強制に対するsubinertialな(時間スケールが慣性周期よりも長い)反流応答を調べた。鉛直2次元的な数値計算の結果、水平境界のない状況についてエクマン・ストークス流として知られている混合層内での反流が、水平境界のある場合についても同様に卓越することが明らかになった。さらに岸沿い方向に変化するストークス輸送を入射させたところ、波の入射している間だけ水平循環が生じることがわかった。力学解析の結果、これはエクマン・ストークス流形成の過程で生じた岸沿い方向の水変位にともなう地衡流として理解できることが明らかになった。 上記の成果は国内の学会で複数回にわたって発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の研究により、岸向きストークス輸送に対する反流応答過程は一通り明らかとなり、基礎的な過程理解は得られた。その影響評価の数値計算や成果の報告の準備も進めており、本研究全体の目的に対し進捗状況は半分を超えていると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる二年度目は、一年度目に得られた過程の理解を現実の沿岸海洋に適用し、どの離岸距離でどの程度の岸沖方向水交換を生み出しているのかを評価する。 具体的には特定の海域に注目して海洋モデルを構築し、波浪再予報モデルから得られたストークス輸送場に対する波・流れ相互作用効果のみでモデルを駆動する。 その結果生じる循環流がどの程度岸・沖水交換に寄与しているかを評価する。
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