研究領域 | 太陽系外惑星の新機軸:地球型惑星へ |
研究課題/領域番号 |
24103502
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 今日子 北海道大学, 低温科学研究所, その他 (70377993)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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研究課題ステータス |
採択後辞退 (2013年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2013年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2012年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 微惑星 / 蒸発 / 衝撃波 / 原始惑星系円盤 / 氷 |
研究実績の概要 |
従来の惑星形成シナリオにおいて見落とされてきた新しいプロセス「微惑星衝撃波による微惑星蒸発と凝縮によるダスト生成過程」について調べた。惑星成長期において微惑星衝撃波は頻繁に発生する。衝撃波後面で加熱されたガスは微惑星を加熱し表面物質は蒸発する。その後、蒸気ガスは再凝縮し固体微粒子(ダスト)を生成する。本研究では微惑星衝撃波による微惑星の蒸発と凝縮過程を記述する理論モデルを構築した。惑星衝撃波の強さ(速度とガス密度)を与え、微惑星表面への加熱率を求めた。加熱率はこれまでの衝撃波加熱に関する研究において得られた流体計算結果および解析的方法に基づき導出した。この加熱率を含めた微惑星衝撃波から微惑星表面までの熱収支を解くことにより微惑星表面温度と蒸発率を求めた。この際、微惑星表面の温度や蒸発率の角度依存性も考慮した。本研究で得られた理論モデル(微惑星蒸発モデル)を原始惑星形成のステージに適用した。衝撃波速度が秒速数キロメートルになると氷微惑星の表面温度が200K程度まで上昇し効率的に蒸発する。原始惑星の成長期において雪線(スノーライン)から軌道長半径3-4AU付近までの広い領域で微惑星蒸発が効率的に起き、100kmサイズの微惑星は円盤ガスの寿命である1千万年程度よりも短い時間内に蒸発する結果が得られた。微惑星蒸発の効果はスノーラインより外側にミクロンサイズのダストが大量に放出される可能性を示しており、原始惑星系円盤において赤外スペクトル観測されているダストの起源に新しい解釈を与える可能性がある。また微惑星蒸発が効く領域は小惑星帯付近(2-4AU)と一致し、小惑星の化学進化に影響する可能性が示唆された。また凝縮によるダスト生成を考える上で重要になる核生成過程について実験と連携して調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では微惑星衝撃波による微惑星の加熱、蒸発、および凝縮について記述する理論モデルを構築することに成功し、このモデルを原始惑星系へ応用した。これにより原始惑星の成長期において氷微惑星が効率的に蒸発することを初めて指摘した。本結果は論文としてまとまり2013年2月に国際誌であるThe Astrophysical Journalに掲載された。また蒸気からの凝縮によるダスト生成を考える上で重要になる核生成過程について実験と連携して調べた。近年、東北大学において均質核生成が起こる際の温度と圧力を同時に決定可能な非接触の“その場”観察法をガス中蒸発法が開発された。代表者はこの実験結果から得られる凝縮温度と粒子サイズと凝縮核生成理論を比較することにより、表面張力と付着確率を導出する方法を提案した。また、核生成実験と理論との比較検討により、マンガンの表面張力と付着確率を求めることに成功した。この結果は国際誌であるJournal of Crystal and Growthに掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
微惑星表面から蒸発したガスは衝撃波後面のガスと共に微惑星の後方に流れる。このときガスの膨張によりガスが冷却し再凝縮が起きる。この微惑星表面から蒸発した水蒸気ガスの熱進化と凝縮過程について、核生成理論に基づいてモデル化することにより調べる。この際、微惑星表面から放出される岩石物質から成るダストの放出を考慮する。ダストがある場合には水蒸気ガスはダストに凝縮する不均質核生成も起きるため、不均質核生成と均質核生成の競合過程について詳しく検討する。また理論だけでなく、実験との連携により核生成過程を調べ、核生成理論を検証する。さらに核生成過程を分子レベルで調べられる分子動力学計算を行い高精度の核生成モデルを構築し、原始惑星系に応用する。
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