配分額 *注記 |
7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2013年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2012年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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研究概要 |
本年度は,TiO2内に存在する酸素欠陥に捕捉されたmuonには,室温付近で電子を非常に弱く束縛した状態があることを見出した. Muonは水素様粒子として知られており,平均寿命2.2 μsで崩壊する時,主にスピン方向に陽電子を放出するため,崩壊直前のmuonのスピンの向きを観測することができる.そのため,外部磁場による摂動を加えることでmuonの電荷状態を知ることができる.このような性質を使い,触媒や光触媒内部での水素の分布や電荷分布を明らかにしていくことを,本研究の目的としている. 我々は,まず,触媒担体や光触媒として広く用いられているTiO2内の水素,更に,欠陥構造内の水素の状態を明らかとすることとした.TiO2内の水素や欠陥構造内は,band gap内,もしくは,band gap付近にエネルギー準位を有するため,TiO2全体の物性や化学特性を大きく変化させることが知られており,これらを制御することが求められているが、電子状態の空間分布など基礎的なことがわかっていないのが現状である。そこで、muonをプローブとした測定を行った.試料は,構造の制御が比較的容易な単結晶基板を用いた.外部磁場(縦磁場、横磁場)を印加しながら,muonの回転を観測する(μSR法)ことで,酸素欠陥でmuonが安定化(準安定)すると,これまで考えられていなかった,muonに非常に弱く束縛された電子が室温付近で存在することがわかった.これは,酸素欠陥に水素が補足されると伝導帯に近いエネルギー準位を持つshallow stateを形成することを示唆している。欠陥と水素が導入されたTiO2は,特異な物性や光触媒能を示すことが近年報告されているが,本年度,新しく見出したstateが,これらの起源の一つである可能性が高い.このように、一つ一つの性質の起源を原子レベルで解明していくとこで,TiO2を始めとする,触媒や光触媒の機能の制御に繋がるものと考えられる。
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