公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
海外旅行時に陥る時差症候群は、体内時計と外界の明暗リズムの位相のズレによって起こるが、長らく時差のメカニズムは不明であった。昨年我々は、時差時、体内時計の中枢である視交叉上核(SCN)の時計発振に焦点を絞り解析を始めた。時差実験は、日本から米国西海岸への移動にあたる、飼育する明暗環境を8時間早める条件で行った。時差を起こす前は、1日半、時差の後は10日間にわたって、4時間毎にSCNをサンプリングし、定量的に時計遺伝子の量を測定した。哺乳類時計の中枢振動体を構成する時計遺伝子を検索すると、時差を起こす前は明瞭な日周リズムを示していたが、時差を起こした直後はそのリズム性が消失した。これは中心遺伝子であるPer遺伝子群だけに限らず、他の時計遺伝子も同様であった。SCNは、そのきわめて安定したリズム性が最大の特徴であるので、この時差後のリズム消失は想定外の驚きであった。その後、リズム性は日々少しずつ回復し、8日後には時差前と同様の明瞭な日周リズムが観察された。この時計遺伝子の結果は、行動レベルに反映され、マウスは、時差の後、新しい明暗環境に順応するのに10日程度を要した。この分子メカニズムを考えるのに、SCNでバソプレッシン(AVP)とその受容体が同一のリズム発振細胞に存在し、巨大な局所神経回路を形成していることに注目した。その結果このV1aV1b受容体ノックアウトマウスでは、明暗環境を変化させたときに生じる時差が完全に消失することを明らかにした(Science 2013)。時差の分子メカニズムとしては世界初の成果である。今後、バソプレッシンV1aV1bシグナル伝達の時差発生の詳細なシグナル伝達の分子メカニズムを、RNA,タンパク質レベルの制御機構を含め解明するとともに、新たな時差スクリーニングを開始して時差関連分子を同定し、時差の全貌解明を基とした、新たな創薬を目指す。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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