公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究課題の目的は、溶液X線散乱(SAXS)とMDシミュレーションとを組み合わせた方法(MD-SAXS法)により、天然変性蛋白質の動的構造を明らかにすることである。今年度は、DNA組み換え修復を行う天然変性蛋白質Hef及びに、ATP合成酵素F1-ATPaseεサブユニットの動的構造解析をMD-SAXS法によって行った。Hefは2つのドメインが100残基と非常に長い天然変性領域によって繋がれた構造を持つ。Hefの動的構造解析には、昨年度行ったMD-SAXS法による計算に、NMRが提供する局所構造情報を取り入れた解析方法を開発することで行った。その結果、Hefの天然変性領域は完全にランダムでは無く、増殖細胞核抗原PCNA等をリクルートする箇所にへリックス構造を形成していること、及びにそのために、全体構造も完全にランダムな構造ではなく、それよりも縮んだ構造を持っていることが明らかになった。F1-ATPaseεサブユニットは約40残基の天然変性領域を持ち、ATP存在下において初めて立体構造を形成する。本年度は、εサブユニットの天然変性構造がどのようにしてATPを認識しているかを明らかにするために、全原子MDと粗視化MD(CGMD)を併用した手法であるMulti-scale ensemble sampling (MSES法)をMD-SAXS法と組み合わせた方法を開発し、εサブユニットの動的構造解析に適用した。解析結果からεサブユニットの動的構造は、天然変性領域にある、ATPを挟む形で結合させる2本のへリックスが天然変性状態ですでに形成されており、またこれらのへリックスが緩くパックした構造を持つことが明らかになった。また、ATP結合は、天然変性領域と構造形成ドメインとの正しい相互作用形成の障害となる残基をへリックス間に折りたたませることで、全体構造の形成を促すことも明らかになった。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 5件)
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