公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
代謝環境変化がどのように転写因子p53のタンパクコードを書き変えてp53転写複合体ネットワークを形成し、代謝調節関連標的遺伝子群の選択的転写制御にかかわっているかは、ほとんどわかっていない。この解明に向けて、(1)高速シークエンサーによるゲノムワイドの解析を用いた、がん細胞・老化細胞・iPS細胞における細胞内代謝関連制御分子の探索と(2)メタボローム解析を用いた、p53が下流の代謝酵素分子群を介して制御する細胞内メタボライトのダイナミクス解析を行ってきた。高血糖刺激とDNA損傷応答経路を活性化させた状態の細胞にp53-FLAGを遺伝子導入し、免疫沈降後におけるp53分子のLC-MS/MS解析を施行した結果、新規の修飾としてp53のカルボキシル化を発見した。この修飾は、p53下流遺伝子の選択的転写活性化に関与すると同時に、前立腺癌の予後に関与する事が明らかとなった。さらに、p53 欠損背景においてRb不活性化により、がん幹細胞様細胞が誘導される詳細な分子機構を解明するため、RNA-sequenceによる遺伝子発現解析と放射性標識グルコース誘導体や放射性標識グルタミン誘導体、Extracellular flux analyzerを用いて代謝状態を解析した。その結果、p53およびRb不活性化がん細胞群では、脂質合成系の亢進、グルタミン代謝の亢進、ミトコンドリア活性の低下が確認された。これらの結果は、癌抑制遺伝子p53-Rbネットワークによる細胞内代謝(中でも特にグルタミン代謝経路)・脂質代謝調節が、ESやiPS細胞の機能制御に重要なだけでなく、がん幹細胞性の形質獲得に重要な役割を果たすことを示しており、新たな視点での創薬基盤構築とがん幹細胞制御の共通分子基盤として、今後の発展研究が期待できる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (30件)
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