公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
農業害虫として名高いアブラムシは、体腔内に「菌細胞(bacteriocyte)」と呼ばれる特殊な細胞群を持ち、この細胞質中に、2億年にわたり受継いで来たオルガネラ様共生細菌「ブフネラ(Buchnera aphidicola, Gammaproteobacteria)」を多数収納している。アブラムシとブフネラは、単独では生存できない絶対的相利共生関係にあり、多細胞生物内における細菌の「オルガネラ化」を理解するための絶好のモデルである。また、同様の共生系は、アブラムシやそれに近縁な害虫グループの生存に必須である一方、周辺環境中の他の生物には存在しないため、環境負荷の低い新規防除法開発の標的としても有望である。本研究計画では、アブラムシが細菌から水平転移により獲得した遺伝子の産物や、ブフネラの分裂面にリング状の構造を形成するアブラムシ由来タンパク質など、菌細胞内共生系において枢要な役割を果たしていると目される機能未知タンパク質に対する選択的阻害剤を探索し、これらを用いて各タンパク質の機能解析を試みた。平成25年度は、前年度に引続き、化合物アレイ法により得られた複数の阻害剤候補化合物のアブラムシ生体への投与実験を進め、このうち1種類の化合物について、アブラムシ-ブフネラ間共生系を撹乱する、きわめて興味深い効果を見出した。これは、標的タンパク質の具体的機能を示唆するものであり、防除剤開発の基盤データとしても重要である。また、本年度はアブラムシゲノム上の細菌由来水平転移遺伝子から菌細胞特異的にタンパク質が合成され、ブフネラ細胞へ輸送されているとの知見を投稿論文にまとめた。これは、当該遺伝子が、オルガネラ祖先由来の核ゲノム遺伝子群と同等の地位を得ていることを示すもので、生物学に大きなインパクトを与える、きわめて重要な発見である。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 3件)
Current Biology
巻: -
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