研究実績の概要 |
自己無撞着GW法において、plasmon pole modelに基づくLuttinger-Ward汎関数Φの評価法を提案し、全エネルギーの表式を与えた。これを我々のグループで開発を進めている全電子混合基底法のプログラム(TOMBO)に実装した。全電子混合基底法は原子軌道と平面波の二つの基底関数を使って準粒子波動関数を表現する方法であり、内殻の局在した電子状態から、価電子や非占有軌道の空間的に広がった電子状態まであらゆる電子状態を効率的に表現することができる他、孤立系から結晶までを統一的に扱えるプログラムになっている。これはFORTRAN90を用いてMPIとOpenMPのハイブリッド並列がなされており、メモリ分散処理されているため、特にGW近似に関わる計算部分では並列機で高いスケーラビリティを示す。これにより、He, Be, Ne, Mg, Ar, Ca原子に対して、LDA, Hartree-Fock近似、GWAにおいてビリアル定理が成り立つことを示し、また、等殻2原子分子(B2, Al2, Si2)の安定スピン状態を議論した。自己エネルギーのω依存性による非エルミート性を回避するために、自己エネルギーをωについて線形化する linearized GW(LGW)法を提案した。そして、これをTOMBOに実装し、このプログラムを用いて、LGW法により、Li, Na原子およびダイマーの準粒子エネルギーと全エネルギー(virial比を含む)を評価した。これらの結果は3報の英文査読付論文に発表した。また、Green関数の満たすDyson方程式の時間発展を準粒子波動関数に対する方程式として解く方法を提案し、これをT行列の時間発展に拡張するアイデアを、12月に開かれた本新学術領域国際シンポジウムISC-QSD2014でポスター発表した。
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