公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
近年急速な発展を遂げてる高分解能X線検出器「超伝導遷移端(TES)マイクロカロリメータ」及びその多素子読み出し技術を、K中間子原子X線分光実験に導入し、K中間子-原子核間の強い相互作用ポテンシャルの深さに関する長年の謎の解明を目指す。本検出器は、荷電粒子ビーム環境下での動作実績がないため、実際の実験条件に近い環境における基本性能評価は不可欠である。本研究では、本計画の実現可能性を示すべく、ビーム環境下におけるTES型マイクロカロリメータの基本性能評価を目的とする。本年度は、PSI研究所のパイ中間子ビームを用いてハドロンビーム環境下における本検出器の基本性能評価実験を実施し、世界で初めてTESを用いた高分解能ハドロニック原子X線分光を実現した。実験には、NISTの時分割SQUID読み出し式の160素子TESスペクトロメータを使用した。TES実機の整備・動作試験を、NIST現地にて進め、実験標的・ビームライン検出器群・データ収集系の整備および動作試験は、高エネルギー加速器研究機構および理化学研究所にて行った。ビーム試験は、2014年10月末、PSI piM1 ビームラインにて実施し、TES検出器を用いてパイ中間子炭素原子4-3遷移X線を高精度で測定することに成功した。これにより、ハドロンビーム環境下においても、エネルギー分解能(~8eV(FWHM)@6keV)・時間分解能(~1usec)ともに、高い性能をもつことを確認した。また、ビーム強度に比例してエネルギー分解能に変化が見られたが、J-PARCのビームコンディションを考慮したシミュレーションとの比較により、K中間子原子X線分光実験に十分な基本性能を持つことが確認された。本実験のプレリミナリーな解析結果を元に、J-PARC E17実験「K中間子ヘリウム原子X線精密分光実験」のX線検出器(シリコンドリフト検出器)をTESに置き換えて行う提案を「Status report」としてJ-PARC実験審査会に提出した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 4件)
Journal of Low Temperature Physics
巻: 176 号: 5-6 ページ: 1015-1021
10.1007/s10909-014-1137-1
RIKEN Accelerator Progress Report
巻: 48
Nuclear Physics A
巻: 915 ページ: 170-178
10.1016/j.nuclphysa.2013.07.005