公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
X線自由レーザー(XFEL)を利用したフェムト秒時間分解X線散乱測定を行うことで、化学反応の進行に伴い分子の構造が時々刻々と変化する様子を実時間で観測することに成功した。実験ではX線に同期したパルスレーザー光をサンプルに照射して反応を開始させ、一定の遅延時間後にX線パルスを照射して反応中間体にX線散乱シグナルを測定した。X線散乱スペクトルをフーリエ変化して得られる動径分布関数は、原子レベルな構造情報を直接与えるため、化学反応を分子構造変化として把握できる。そのため、分子構造論に基づいた反応論を議論することが可能であり、化学反応の実時間観測が実現される。まさにこれは化学反応式における“→”の「可視化」であり、反応メカニズムの詳細について新しいレベルの理解をもたらす。ジシアノ金錯体中の金(I)イオンは金-金間親和性によって水素結合と同程度の強さで会合体を形成する。この会合体の最低励起状態においてσ結合性軌道が占有されるため、光励起によって会合体中の金原子間に共有結合が生成される。したがってこの光反応を追跡すれば化学結合形成によって新しい分子が生まれる瞬間の可視化が実現される。また、先行されて行われた過渡吸収測定では、非常に洗練された光反応の制御が実現されており、本研究においても、励起バンドを選択することによって特定のサイズの会合体内の反応を誘起させて測定を行った。ジシアノ金錯体が3つ集合した3量体をターゲットにして、この会合体中の光化学反応をXFELから得られるフェムト秒X線パルスを用いて可視化してみると、光励起直後の構造変化は複雑であり、エネルギーが最小となる分子構造に至る前に、いわば前駆構造ともいえる状態を取ることが分かった。本研究より光機能の発生原理を詳細に議論するには分子動画撮影法が極めて有効であることが実証された。本研究はNature誌に掲載され5紙において新聞報道された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 5件)
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