公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
けいれん発作の反復を主徴とする“てんかん”は人口の約1%に見られる頻度の高い神経疾患であり、その一部は難治性である。したがって、根本的なてんかん病態の理解と治療法の開発が待たれている。私共はこれまでに、家族性側頭葉てんかんの原因遺伝子産物である分泌蛋白質LGI1が膜蛋白質ADAM22/ADAM23のリガンドであり、脳内の主要な興奮性シナプス伝達を担うAMPA型グルタミン酸受容体の機能を促進することを見出した。また、LGI1機能欠損マウスでは海馬シナプスのAMPA受容体機能が低下し、てんかんが必発することを見出した。本研究では、LGI1遺伝子変異がシナプス伝達異常と神経回路異常をもたらす分子過程を明らかにして、てんかんの病態解明を目指すと共に、見出した分子病態に基づく新たなてんかん治療戦略を探索することを目的とする。今年度は、当初の研究計画を着実に遂行し、下記のような成果を得た。前年度までにヒトLGI1変異の大半が細胞内で(主に小胞体内で)LGI1蛋白質の構造異常が原因で、輸送障害をうけて分泌不全となっていることを見出した。また、培養細胞レベルで化学シャペロン投与によりLGI1の輸送障害が改善されることを見出した。今年度は、LGI1変異を有するヒトてんかんモデルマウスに、化学シャペロンを投与することにより、けいれん表現型が軽減することを見出した(Yokoi et al., Nat Med 2015)。本知見は、てんかんの病態機構と治療戦略に新しい概念を与えるものである。一方、私共は海馬歯状回顆粒細胞を代表とする様々な神経細胞に細胞種特異的にLGI1を発現させることに成功し、LGI1機能異常によって生じるてんかんの責任神経細胞を同定しつつある。このように、本研究では当初の計画を順調に進め、予想以上の進捗と成果を得た。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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