公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
Sox2などの転写因子は、単独では作用せず、ゲノム上の隣接した箇所に結合する他の転写因子をパートナーとした複合体として作用する。本研究では、パートナー因子との相互作用を通じて、Sox2がどのような過程をへてゲノム上の標的部位に安定に滞在するのかを解析した。培養細胞内で生理的なレベルでSox2-EGFP融合タンパク質を発現して、そのFRAP kineticsを解析した。野生型のSox2―EGFPのFRAPは、約4.5秒の時定数をもつが、パートナー転写因子との相互作用領域に変異を導入したSox2では、時定数が約半分に低下し、DNA結合領域の変異体では、時定数はさらに小さなものであった。Sox2はパートナー因子の相互作用によって、核内の移動性が大幅に低下するという結果である。しかし、2014年3月にChenたちが次の報告をした。核内で蛍光標識Sox2の滞在時間が比較的長時間である場所を選び、Sox2の滞在時間を1分子計測したところ、平均12秒で、この制御標的上の滞在時間が、パートナー因子との相互作用領域のアミノ酸置換によっては変化しないというものであった。この結論は、私たちの研究の結論とは全く異なっていた。本年度は、この食い違いがどのようなものに由来するのかを明らかにすることに力を注ぎ、核内のSox2結合領域をChIP-seq法で解析した。その結果、Sox2と特定のパートナー因子(Oct3/4など)との相互作用によって活性化されるエンハンサーには2つのタイプがあることがわかった。第1のタイプはSox2とパートナー因子のヘテロダイマーで活性化されるもので、多くのエンハンサーが対応する。第2のタイプは、多数のSox2ならびにパートナー因子結合配列が広範囲に散在するもので、おそらくSox2とパートナー因子はヘテロダイマーを形成することはない。私たちは、主として第1のタイプ、Chenたちは、主として第2のタイプのエンハンサーに結合したSox2を計測したものであると考えられる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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