公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
「アクチントレッドミリングによる細胞運動の原子構造に基づく解明」を目的として、細胞性粘菌(D. discoideum)のアクチンおよび変異体アクチンの結晶構造をほぼ2オングストロームの分解能で解いた。結晶作成の際には、結晶化の過程でのアクチン重合を防ぐため、ゲルゾリン・セグメント1をアクチンと等モルを加えた。トレッドミリングにはアクチンの重合反応が必須であるが、チロシン143をフェニルアラニン、イソロイシン、トリプトファンに変異させると、いずれの場合も、NaClによる重合の程度が低下した。またこれらの変異アクチンを発現させるプラスミッドを導入した細胞性粘菌では飢餓誘導性細胞分化が障害された。イソロイシン変異アクチンはミオシンのATP加水分解を活性化できなくなり、トリプトファン変異アクチンは野生型よりも活性化した。フェニルアラニン変異アクチンではあまり変化は認められなかった。そこで、アクチンの疎水的クレフトの入り口にあるチロシン143は、ミオシンのATP分解反応の律速過程である弱い相互作用に関与していることが示唆された。上記の3種類の変異アクチンの結晶構造のなかで、トリプトファン変異アクチンでは、変異箇所から離れたカルボキシル末端領域(COOH末端領域)に構造変化が起きていることが分かった。COOH末端領域とチロシン143の中間領域では特に変化は認められなかった。この事は、アクチンの元来の性質としてCOOH末端領域に多形性があることを示唆している。細胞性粘菌アクチンの公表されている結晶構造でも、同様な構造変化が起きていることが分かり、更にアクチンのCOOH末端領域が多形性を示す可能性が高まった。これまでに私達はアクチンのATP結合部位には水素結合で結ばれた水分子のネットワークがあることを示してきたが、この水分子とCOOH末端の多形性の関係についても、調べてゆきたい。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biochem. Biophys. Res Commun.
巻: 441 号: 4 ページ: 844-848
10.1016/j.bbrc.2013.10.144