研究実績の概要 |
細胞運命決定は発生、成体組織の維持において重要である。古典的細胞運命決定には転写因子が必須であると考えられてきたが、我々はこの古典的概念を覆す現象を発見した。(Okuyama et al PNAS 2013, Cold Splring HarborMeeting 2014 Oral presentation, ASH 2013 Oral presentation)きっかけは白血病細胞にmiRNAを導入した際に、B細胞分化を誘導できたにもかかわらず、B細胞分化に必須の転写因子であるE2A, EBF1, PAX5の発現上昇を全く認めなかったことにある。この現象から、miRNAが転写因子独立にB細胞分化を引き起こす可能性を検討するために、3つの転写因子の中でも、その機能が他を補完するEBF1に着目した。B細胞運命決定に必須転写因子EBF1を欠損させた場合、B細胞系列が欠損する。B細胞が最終段階まで分化した状態の細胞においてさえ、EBF1を欠損させると全てのB細胞がT細胞、ILC細胞に運命転換をする。 (Nature Immunology 2013)このようにB細胞をB細胞たらしめるのが転写因子EBF1を欠損した造血前駆細胞にたった一つのmiRNA, miR-195を導入すると、B細胞系列決定が起こった。EBF1欠損造血前駆細胞にmiR-195を導入し、IL-7, Flt3, 存在下ストローマ細胞Tst4上で2週間培養すると、B細胞系列決定を示す表面マーカーCD19が発現,分子学的マーカーVDJ領域の組み換えが認められた。これらのマーカはB細胞系列決定が引き起こされたことを示し、本研究課題の目的が達成された。
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