研究概要 |
遺伝子改変マウスを用いて発生期の精髄を解析することによって、モルフォゲンとグリコサミノグリカン鎖の相互作用が神経幹細胞の分化をどのように制御するかを解析した。発生期脊髄では、roof plateおよびfloor plateから分泌されるモルフォゲンが協調的に機能することによって、背腹軸にそって明瞭なドメイン構造を形成する。そこで、E10.5・E12.5における脊髄でドメイン構造を、ドメインに特異的な発現をするRNA probe (Math1, Olig3, Pax7, Nkx6.1, Olig2, Nkx2.2)を用いてin situ hybridizationにより解析した。 これまでにケラタン硫酸の欠損マウスで、ドメインが腹側へシフトすること・オリゴデンドロサイトの分化が抑えられること・運動ニューロンの産生が亢進することなどを見出してきた。本年度はヘパラン硫酸・コンドロイチン硫酸の変異マウス(Sulf1 and 2-KO, GalNAc(4,6)ST-1-KO)においても同様の解析を行い、ドメイン構造を評価した。いずれの遺伝子改変マウスも脊髄ドメイン構造には変化が見られなかった。しかし、Sulf1 およびSulf2 もしくはそのダブルKOマウスにおいてオリゴデンドロサイトの発生に遅れが生じていた。 モルフォゲンの下流にあるシグナル伝達を解析することで、どのシグナル伝達に影響がでているかも解析した。Wntシグナルに対してはAxin2をShhシグナルに対してはGli1やPatchedの遺伝子発現を指標にして評価した。ケラタン硫酸欠損マウスにおいて、Patched-mRNA の分布パターンは腹側にシフトしており、これがドメイン構造の腹側シフトを引き起こしている可能性が示唆された。
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