公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ほ乳類の腎組織は、ひとたび損傷を受けるとその機能を再生するのは極めて難しい。一方、両生類や魚類のなかには、生体内で腎組織を再生できるものがあり、この再生能力を支える分子機構を応用すれば、ヒトにおいても腎臓などの複雑な組織や器官を再生できるようになると期待される。これまでの発生再生学的な研究から、再生で使われる多くの遺伝子は、発生過程で使われるものが再利用されていることが知られている。本研究は、両生類の腎再生過程で働く遺伝子の発現調節メカニズムをほ乳類などの再生能が限られた動物と比較し、ネフロン再構築の遺伝子ネットワークの全体像を捉えることを目的としたものである。これまでに魚類の腎再生過程で発現が上昇することがしられているLhx1、Six2、Pax2、Pax8の保存非コードDNA領域について、両生類のトランスジェニックエンハンサーマッピングシステムと外科的切除による再生実験を組み合わせ、ツメガエルのそれら遺伝子座近傍で、発現を活性化する再生シグナル応答エンハンサーを同定してきた。本年度は、それらを腎再生が可能な魚類と両生類の間のみで保存されている領域と、再生能が限られているほ乳類においてもその相同配列が保存されている領域に着目し比較解析を行なったところ、両生類の前腎再生組織で強いエンハンサー活性を示す領域は、ほ乳類においても進化的に保存されている領域であることがわかった。次に、マウスの相同領域を用いてトランスジェニックレポーター解析を行なったところ、マウスのゲノム中にも両生類の前腎の再生過程で働くエンハンサーが存在することがわかった。これらの結果は、両生類や魚類と比べほ乳類の再性能が限られている要因は、再生で働く再生シグナル応答エンハンサーとその制御下にある遺伝子が失われたというよりも、エンハンサー活性を抑制するメカニズムが進化の過程で獲得されたことを示唆している。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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