公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
重篤な薬剤副作用であるQT延長症候群はときに致死性不整脈が誘発され、その発症は、自律神経系刺激や性差などによる細胞内シグナルの変化の影響を受ける。当該研究では、性ホルモンによる心筋イオンチャネルの制御機構について、定量的な実験から得られたパラメーターを心筋細胞モデルに導入することにより、単独のチャネル分子ではなく細胞全体の不整脈発症のメカニズムを統合的に理解することを目的とした。当該研究期間において、大きく2項目を達成した。1)性ホルモン受容体非ゲノム作用に関する定量的データの取得およびシミュレーション:マウス胎児心筋細胞において,一分子FRETプローブを用いたcAMP/PKAのイメージングを行った。膜ラフト依存的なcAMP/PKA活性を計測し,プロゲステロン受容体活性化により,膜ラフト近傍でcAMP/PKA活性が抑制されることを示し,PDE2によってクロストークが制御されていることを見出した。プロゲステロン以外のエストロゲンおよびテストステロンの作用についても検討し,心筋で作用する性ホルモン3種について、シミュレーションへ導入可能なデータを取得し,男女別の心筋細胞モデルを作成した。2)ヒトiPS細胞由来心筋の成熟化法の開発:薬剤安全性試験の非臨床段階で、ヒトiPS細胞技術を利用して心毒性を評価する技術に注目が集まっている。当該研究では、幹細胞由来分化心筋の電気的性質が未熟であるという点に注目し、薬物作用に影響を与えることを見出した。シミュレーション実験およびウェット実験から、静止膜電位の形成に寄与している内向き整流性カリウムチャネルの発現が幹細胞由来心筋では低いことが原因となっていることを見出した。このカリウムチャネル遺伝子を導入して人工的に分子を発現させることにより、QT延長薬の作用の濃度依存性の精度を向上することに成功した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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