研究実績の概要 |
平成 27 年度は同期回転ガス惑星(ホットジュピター)を想定したパラメター数値実験を行なった. 用いたモデルは地球流体電脳倶楽部の惑星大気大循環モデル DCPAM5 である(http://www.gfd-dennou.org/library/dcpam/). 動径方向に静水圧近似を仮定した 3 次元プリミティブ系に入射短波放射と長波放射を表現するための 2 バンドの放射過程を適用している. 入射中心星放射は同じ半球面を常に照らしている. 計算領域を大気圧 1e7 Pa の深さまでとった. 計算領域下面からの熱流はない. 解像度は経度方向に128 点, 緯度方向に 64 点(三角波数切断 42), 鉛直方向に 50 点とした. 観測により物理パラメターが比較的よく同定されている系外惑星 HD209458b の状況での数値計算を標準実験として, 中心星からの放射強度を減少させて数値実験を行なった. 入射中心星放射強度が HD209458b の値(1e6 W/m^2)の場合には, 強い赤道超回転ジェットが生成し, 1 気圧レベルまで達している. 入射中心星放射強度を弱めていくにつれて, 赤道ジェットは弱まり浅くなっていく. そして入射中心星放射強度を 1e3 W/m^2 にまで下げると, 赤道ジェットは回転と逆方向に向き, 高緯度の回転と同方向のジェットが卓越する. この東西ジェット流の向きの遷移は, 入射放射強度が低いと冷却時定数が長いくなり, 速度擾乱の緯度成分と経度成分の相関が逆転し角運動量輸送が赤道から中高緯度へと運ばれるようになるからである. この新たに見いだされた, 潮汐固定されたガス惑星の赤道逆行ジェットの大気大循環レジームは, これまでに提唱されていた赤道順行ジェットの大気大循環とは対照的なものである.
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