公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本年度は、前年度に引き続き、特定の構造をとらないヒストンテールが生み出す動的挙動の実態、および、その分子基盤を明らかにすることを目的として、イオンモビリティ質量分析(IM-MS)と分子動力学(MD)シミュレーションを用いて、以下の3つの課題に取り組んだ。課題1.IM-MSによる測定で観測されたH2A/H2B二量体の構造多様性の創出機構解明:前年度に引き続き、IM-MS装置内で起こっていると予想されるH2A/H2B二量体の活性化過程を再現するべく、気体分子を露わに含んだシミュレーションを複数の温度および分子密度で実行したが、IM-MS実験で観測された二峰性の分布を再現するには至らなかった。課題2.MDシミュレーションによるヒストンテールのしなやかな動きの実態解明:柔軟なヒストンテールが示す複雑な運動を特徴付け、その分子基盤を解明すべく、H2A/H2B二量体の3つのヒストンテールを対象として、溶液中のMDシミュレーションを実行した。得られた結果を「時間構造に基づいた独立成分分析(tICA)」によって解析したところ、テールが示す遅い運動の抽出に成功したとともに、この遅い運動が複数の状態間の構造転移として特徴づけられることがわかった。また、抽出された遅い運動は複数回実行したシミュレーションごとに大きく異なっており、テールの遅い運動が極めて多様であることを示唆していた。課題3.翻訳後修飾がヒストンテールの構造・ダイナミクスに与える影響の解析:翻訳後修飾の影響を調べるべく、H2A/H2B二量体に2種類の修飾(リジン残基のアセチル化とアルギニン残基を脱イミノ化)を施し、IM-MSによる測定を行った。これらの翻訳後修飾では正電荷が中和されたにも関わらず、IM-MS実験で得られた到着時間分布には、アセチル化と脱イミノ化ともに、ほとんど変化が見られなかった。この結果は、二量体イオンの大きさが修飾によって変化しないことを示唆する。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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120006020807