公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
触媒合成を次のように行った。まず、L-セリンから誘導したアジリジンを合成し、これにエーテル結合を有するアルコールをルイス酸触媒存在下に反応させると、ポリエーテル鎖を持つアミノ酸保護体がほぼ単一のエナンチオマーとして得られた。脱保護してアミノ酸としたのち、水酸化リチウムで処理することによりアミノ酸リチウム塩が得られた。この手法により、エーテル結合の数が1~3個のもの、エーテル鎖に芳香環を有するものや枝分かれしたものなど、6種類のポリエーテル鎖を有するアミノ酸リチウム塩を合成することに成功した。続いて、得られたアミノ酸塩を触媒として用いた場合のポリエーテル鎖が反応に及ぼす影響について調査するため、代表的なイミン-エナミン型有機分子触媒反応である、マロン酸エステルのエノンへの不斉マイケル付加反応を行った。これまでの研究により不斉触媒として有用であることが分かっているO-シリル化セリン触媒と比較したところ、今回合成した触媒のアミノ酸側鎖の嵩高さはほぼ同程度であることが明らかとなった。一方、溶媒和による影響を排除し、アミノ酸に導入したポリエーテル鎖のマイケル付加反応における効果を調査するため、非極性溶媒である塩化メチレン溶媒中で反応を行ったところ、O-シリル化セリン触媒と今回合成した触媒とで反応速度に有意な差が見られた。特に、3つのエーテル結合を有するアミノ酸塩と、枝分かれしたポリエーテル鎖を有するアミノ酸塩は塩化メチレンに対して優れた溶解性を示し、O-シリル化セリン触媒と比較して2倍程度の反応速度でマイケル付加体を与えることが分かった。エナンチオ選択性についてもシリルエーテル触媒よりもポリエーテル触媒の方がわずかながら良い結果を与えた。以上、本研究により、アミノ酸塩の側鎖にポリエーテル鎖を有する触媒は効果的にイミン-エナミン型有機分子触媒反応を促進することが明らかとなった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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