配分額 *注記 |
7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2015年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2014年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
|
研究実績の概要 |
プロセス化学に資する新しい光増感剤の分子設計 最近、LED光源を用いた光反応の研究が増えてきている。高圧水銀灯やキセノンランプと違って、赤外線を発しないため熱の問題が少ないこと、エネルギーを高効率に利用できること、低波長の紫外線カットが不要で安全であることなど利点が多く、プロセス化学の切り札として期待されている。現在、市販されている代表的な光源は、405 nmや450 nmをはじめとする可視領域と365 nmおよび385 nmである。しかし、LEDは発光半値幅が狭いため、一般によく使われる増感剤である多環芳香族炭化水素の吸収帯とLEDの発光波長が一致しない場合が多く、その利用には限界がある。 さて、我々はピレンの1,3,6,8位にアルキル基を導入したテトラブチルピレン(TBPy)の吸収がピレンλmax = 320 nmに比べて40 nm以上レッドシフトしていることを報告している。このTBPyを用いると、λmaxから明らかなように、365 nmのLED光源を有効活用できる。すなわち、増感剤の吸収帯を光源に対して最適化しようという戦略である。 そこで、TBPyを用いた有機触媒による光クロスカップリング反応(アリルスズを用いたp-ジシアノベンゼンの光アリル化)を行った。その結果、プロセス化学に有用な様々な知見が得られた。 以前の報告では、増感剤であるピレンの濃度を基質2に対して20 mol%程度用いていたが、TBPyを増感剤としてLED光源を用いると0.05 mol%程度でもむしろ反応が速く進行することがわかった。また365 nm付近でのピレンの吸光度は大きくないが、1 mol%程度ならばTBPyと同程度の速度で反応が進行することもわかった。波長の最適化の有用性が明らかになるとともに、有機触媒を用いる光反応は、金属錯体触媒よりも触媒濃度が低く、合成化学への展開が期待される。
|