公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
脳と脊髄からなる中枢神経系の細胞外環境は、様々な病態下で大きく変化する。脳内環境の変化は、病態脳における神経系細胞の挙動に影響する可能性があるため、本課題では、病態における脳内環境の変化による脳脊髄の細胞応答の変化、特に中枢神経傷害後に生じる神経組織の修復機構に関して研究を行った。傷害を受けた中枢神経系では、しばしば血液脳関門の破綻が生じる。血液脳関門が破綻すると、血液が脳脊髄に漏出する。血液には神経細胞に対して細胞死を誘導する物質が含まれることが報告されており、血液脳関門が破綻すると神経組織の傷害が進行すると考えられていた。しかし、ある種の病態モデルでは、血液脳関門が破綻した部位で中枢神経系の組織修復、特に髄鞘の修復が自然に起こることが報告されていた。そこで本研究では、血液に含まれるには髄鞘の修復を促す物質も含まれると想定して、血液中に含まれる末梢臓器由来のホルモンの髄鞘修復効果を検討した。髄鞘はオリゴデンドロサイトによって形成されるため、ホルモンとして知られる分子がオリゴデンドロサイトの発達に与える影響を検討した。in vitroの実験から、脂肪細胞が産生するレプチンが、株化したオリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖を促進する作用を見出した。レプチンの受容体は6種類同定されているが、その中でもBタイプレプチン受容体のみが、細胞内のシグナルを伝達することができる。免疫染色を用いた検討から、使用した細胞にBタイプレプチン受容体が発現していることを見出した。また、レプチンを暴露された細胞では、細胞増殖のキー分子であるERKのリン酸化が亢進していることもわかった。以上の結果は、病態の脳内環境の変化である「末梢環境に備わるレプチンの脳脊髄への流入」が髄鞘の自然修復に寄与する結果を支持するものである。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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