公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
前年度までに、分裂酵母の5'非翻訳領域(UTR)では転写と共役してクロマチン構造が解きほどかれることを示唆する情報を得ていたが、その機構はまったく不明であった。本年度は、転写と共役したクロマチン制御を分子レベルで理解することを目的として、継続時間を考慮した隠れマルコフモデル(dHMM)に基づくヌクレオソーム配置予測を試み、さらに、UTRが内在的にもつ塩基レベルの特徴を詳細に調査した。その結果、最新のヌクレオソーム配置情報でdHMMをトレーニングすれば既知ヌクレオソーム配置は高い精度で予測可能であることが判明した。ヌクレオソーム状態を107塩基対から147塩基対まで想定してモデルを組んだところ、当然ながら147塩基対と規定した場合に最適解が得られたが、一部の込み合った領域ではより短いモデルが予測に適するケースも見受けられた。興味深いことに、5'-UTRはヌクレオソーム配置に適しているが、アデニン(A)とチミン(T)の塩基構成に特徴をもつ領域であることが判明した。センス鎖がTに富み、Aに乏しく、しかしながらAあるいはTがおよそ150塩基対毎にピークを迎えるように波打って存在しており、このピークの位置はヌクレオソームのDyadの位置と一致した。同様の配列パターンは3'-UTRとncRNA領域にもエンリッチした。この結果は、ヌクレオソームのDyad付近にT優位なATリッチ配列が存在し、Tが多い側の鎖がセンス鎖として転写される際にヌクレオソームが解きほぐされることを強く示唆している。この領域は転写速度が高くRNAが高次構造をとることを示唆する結果を前年度に得ており、DNA配列に埋め込まれた未知のクロマチン制御機構が転写産物の運命決定に寄与する可能性がある。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
Nucleic Acids Research
巻: 44 (9) 号: 9 ページ: 4147-4162
10.1093/nar/gkw008
120005819302
http://www.med.shimane-u.ac.jp/biochem2/index.html