公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
癌の増殖と転移には腫瘍微小環境が重要な役割を果たす。本研究は平成24-25年度新学術領域研究「転写代謝システム」の研究成果を踏まえ、エピゲノム修飾変化と転写因子の統合的な解析から癌の悪性化や治療抵抗性を引き起こすメカニズムを解明することを目的とした。本研究では、特に低酸素や低栄養といった癌にとって過酷な環境における代謝経路の役割についてゲノムワイドな手法を用いて解析を行った。本研究の研究成果として、(1)低酸素・低栄養で悪性化する癌細胞におけるエネルギー産生機構の解析を行い、トランスクリプトーム・メタボロームの解析から解糖系ではなく脂質分解系に依存する事を見出した。(2)エピゲノム因子のゲノムワイドな発現解析とノックダウン、ChIP-Seqの統合解析から低栄養において重要な代謝経路の解明を試みた結果、様々な代謝経路の酵素群のなかで特に、細胞膜リン脂質のエタノールアミン経路におけるエタノールアミンキナーゼが、低栄養誘導性のヒストン脱メチル化酵素を介した転写制御を受けている可能性を見出した。(3)また、低栄養のがん細胞やマウス腫瘍移植モデルの腫瘍組織内のメタボローム解析によりエタノールアミンリン酸が最も蓄積する代謝物である事を見出し、さらに、エタノールアミンリン酸の添加はin vitroのみならずin vivoの腫瘍増殖を促進する事、また、エタノールリン酸の蓄積にはエタノールアミン経路の律速酵素の発現低下が関与する事を見出した。本研究から腫瘍微小環境における転写・代謝システムの解明は癌悪性化や治療抵抗性を持つ癌を克服する新しい制癌法の開発に繋がると考えられるが、本研究で見出したエタノールアミン経路を基軸とした代謝経路が新しい癌の分子標的法や治療法の開発に繋がることが期待される。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 2件、 招待講演 10件)
Oncogene
巻: 33 号: 29 ページ: 3803-3811
10.1038/onc.2013.358