公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
葉緑体は原始シアノバクテリアの細胞内共生によって誕生したと考えられているが、共生関係の成立に際して、光合成機能を維持し守るためには、核と葉緑体間で光に応答した遺伝子発現を協調させることが宿主・共生体の両者にとって必須であったと考えられる。本研究では、内部共生起源に近い葉緑体を持つ原始紅藻Cyanidioschyzon merolae(シゾン)を用いて、葉緑体ではたらくヒスチジンキナーゼ(CmHIK)による宿主遺伝子の調節機構を明らかにすることで、核とオルガネラ間の遺伝子発現協調機構の成立を理解することを目的とした。これまでの研究から、暗条件で活性化し転写を抑制するCmHIKを薬剤Signermycin Bによって阻害すると、暗条件にもかかわらずCMK296Cなど一部の核コード光応答遺伝子の発現が誘導され、CmHIKに依存した葉緑体から核への光情報伝達経路の存在が示唆されたため、今年度においてはこの情報伝達経路の詳細について検討を行った。まず、ストレスなど細胞内の様々なシグナルを核に伝える働きをもつMAPKに着目し、明条件下でMAPK活性を促進・阻害する処理を行ったところ、CMK296Cの発現量がそれぞれ誘導・抑制されることが分かった。また、レトログレードシグナルの1つと考えられているテトラピロール中間体のヘムを暗条件下で添加したところ、同じくCMK296Cの発現が誘導された。これらの結果から、CmHIKにより葉緑体で認識された光情報は、MAPKやヘムを介して核に伝達され、特定の転写因子によりターゲット遺伝子の発現を調節している可能性が示唆された。このように、宿主細胞が従来より持っていた細胞内シグナル伝達経路の上流にオルガネラ由来の情報を「入力」することが、共生関係の成立において重要なステップであるという新しい考え方を提案することができた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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