公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
私たち人間には、他者の内的状態を知り、他者が感じるのと同じように感じることができる「共感性」という能力が備わっている。共感性は乳児期からすでに獲得されており、例えば産婦人科内の赤ちゃんベッドが並ぶ部屋では、一人の赤ちゃんが泣きだすと、つられたように周囲の赤ちゃんも激しく泣き出す現象が見られる。これは、最初の赤ちゃんの悲しい感情が周囲の赤ちゃんに伝染したために起こる、情動伝染と呼ばれる最も原始的であると考えられている共感性である。カリフォルニア大学のファウラーらの研究によると、自分の周りに幸せな人が多くいる人は、自身の幸福度が将来的に上昇する確率が高くなるという。このことは、幸福感のようなポジティブ感情においても情動伝染が起こる可能性を示唆するものであるが、ポジティブ感情の情動伝染についてはあまり研究がなされていない。そこで本研究では、場面想定法を用いた共感性課題を用いて、幸福感の情動伝染の分子・神経基盤を明らかにすることを試みた。実験に使用した課題は、こちらが提示する色々な場面に遭遇した時のことを想像してもらい、その際の自身の幸福度はどれくらいかを評価するというもので、場面の感情価(快、不快、中性)×幸せそうな友人の有無(一緒に経験、自分ひとりで経験)の2要因混合計画で実施された。実験の結果、自己評価質問票における喜び感情の伝染得点の高さと、幸福感の伝染の程度との間に正の相関が見られるとともに、下頭頂葉ミラーニューロン活動との間にも正の相関が見られることが示された。また、下頭頂葉ミラーニューロン活動はオキシトシン受容体遺伝子多型、セロトニン2A受容体遺伝子多型と関連していることも見出された。これらの結果から、ポジティブ感情の情動伝染においてもミラーニューロンシステムが関係していることが示唆されるとともに、その活動をオキシトシンやセロトニンが修飾していると考えられる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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