公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
近年、海馬において時間情報を表象するニューロン(時間細胞、エピソード細胞)が報告され、注目を集めている。このような海馬のエピソード細胞や時間細胞の重要な特徴は、外部入力刺激に依存していない内的生成された活動であるという点と、順序の再現性の高いニューロン群(セルアセンブリ)の逐次活動である、という点である。つまり、ネットワークにより内的生成されたセルアセンブリの逐次活動によって時間性や近未来行動が表象されていると言える。H27年度は、意思決定課題を行っているラットにおいて、海馬が過去・現在・将来の行動をいかにセルアセンブリによって表象しているかを明らかにする研究を行った。本研究では、課題行動中のニューロンの活動を観測するため、多チャンネルシリコンプローブを用いた大規模細胞外記録実験を行った。この結果、海馬ニューロンは、意思決定に必要な情報や行動情報を符号化していることが明らかになった。さらに、これらのニューロンは、海馬の局所電位活動あるシータ波(7-11Hz)に対して位相前進を生じており、このため、過去に受けた刺激情報・現在受けている刺激情報・将来の行動情報がシータ波の1サイクル内において圧縮されて表現されていることが明らかになった。この結果は、海馬では連続しておこるイベント情報がシータ波1サイクルに圧縮されていることを示しており、海馬の時間情報処理のメカニズムを考える上でとても重要な知見となる可能性がある。これらの研究結果は現在、投稿準備中である。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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生体の科学
巻: 66 ページ: 3-6