「尊厳」概念はプラトンの「アクシア」をキケロが「dignitas」と翻訳した時からの概念史を持つ。しかも第二次世界大戦後に、この大戦のもたらした巨大なカタストロフィに対抗する理念として重要な意味を付与されるとともに、国際条約や国内憲法によって法益の対象ともなった。それ以降、さらにその社会的重要性は増しており、分断された社会を新たに統合できる規範的理念として国際的に注目されている。特にロボット・AIといった先端科学技術やゲノム編集・iPS細胞研究などの先端医療技術、さらにヘイトスピーチ対策・高齢者介護・「コロナ・トリアージ」・尊厳死などといった喫緊の課題に対して「尊厳」は規範的役割を担い得ると期待されている。本研究領域では、これらの問題を学術横断的に検討して「尊厳」を総合的に捉え直した上で、その研究成果を社会実装するために、「尊厳学」という学際的な学問分野の創生を目指す。
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