多細胞生物の複雑で秩序ある構造や機能は、細胞と細胞外マトリックス(ECM)との相互作用によって形成される。近年、ECMの動態および物理化学的な特性の計測・操作技術が進歩し、ECMは従来考えられていたよりも遥かに動的で、さらにECMがシグナル分子、高次構造、粘弾性などの「マルチモーダルな時空間情報」を細胞に与えることで、多細胞システムの自己組織化や器官の形づくりといった複雑で動的な生命現象を支えていることが少しずつ明らかになってきた。本領域では、実験系生物学者、高分子化学者、数理・データ科学者が集結し、学際的かつ包括的なアプローチにより、ECMの「マルチモーダル情報」と「ダイナミクス」を理解・操作する。そして、多細胞システムにおけるECMの動的な作動原理を解明することで、ECMを十分考慮せず細胞中心で構築されてきた生物学の体系を大きく変革する。
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