本研究領域は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを世界各地がいかに経験したかについて、主に文化人類学と歴史学の手法を用いて記述し、「都市化と移動」、「生政治と脱人間中心主義」、「集団化と比較」、「格差とケア」という四つの計画研究によって取り組み、「感染症の人間学」を構想するものである。「真に感染症に強い社会と来たるべき世界の姿に関するビジョンを提示する」ことを目的とした時宜にかなった提案であり、単に時流に乗った研究領域ではないことが、緻密に練り上げられた領域計画書から読み取れる。感染症パンデミックに文化人類学と歴史学が共同してアプローチすることは新規性という点ではやや弱く、「感染症の人間学」の構想における「人間学」のビジョンが明確ではない点があるものの、文化人類学と歴史学を中心としつつ、それ以外の分野の研究者が各計画研究に加わって「脱領域的」な組織が構成されていることから今後の発展が期待できると評価された。総合的には、現代社会に喫緊の研究であり、研究手法に革新をもたらす野心的試みであるという点も含め、学術変革領域研究としての波及効果を期待する。
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