研究領域 | 太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成 |
研究課題/領域番号 |
15K21709
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
草野 完也 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (70183796)
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研究期間 (年度) |
2015-11-06 – 2020-03-31
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キーワード | 宇宙天気 / 宇宙気候 / VarSITI / PSTEP / 黒点 / 予測 / 太陽周期 / 地磁気 |
研究実績の概要 |
(1)The 2nd VarSITI General Symposium 及び同国際スクールをイルクーツク(ロシア)で、低緯度・赤道電離圏に関する国際スクールをラゴス(ナイジェリア)及びバンドン(インドネシア)でそれぞれ開催し、若手研究者の育成と共同研究を推進した。(2)米国NASAより研究者を名古屋大学に招聘し、コロナ質量放出の惑星間空間伝搬過程の予測システムの開発を進めた。(3)米国ビッグベアー天文台より研究者を名古屋大学へ招聘し、地上大型太陽望遠鏡によるフレア観測によってフレア発生のトリガ過程に関する共同研究を実施し、共著論文を出版した。(4)草野領域代表がパリ天文台を訪問し、欧州の太陽フレア予測プロジェクトであるFLARECASTの主要メンバと新たなフレア予測スキームの共同研究について議論を行った。(5)European Space Weather Weekで本領域の企画セッションを実施し、特に地磁気誘導電流予測に関する国際共同研究計画について討議した。(6)大阪大学の大学院生をケンブリッジ(英国)に派遣し、過去の太陽黒点スケッチに関する文献の調査を行った。その結果、マウンダー極小期における太陽黒点の記録を見出すことができた。(7)京都大学の研究員をNCAR(ボルダー、米国)に長期派遣し、気候モデルに導入する最新の化学モデルの高速化について共同研究を実施した。その結果をPSTEP A04班が開発しているモデルに組み込み長期変動の計算を行うことにより太陽活動の気候影響の解析を発展させた。(8)中国から大学院生を招聘し、雲南省の湖底堆積物中の宇宙線生成同位体を解析して過去の太陽活動と気候変動の相関を解析する国際共同研究を実施した。(9)中国雲南省麗江市に国立天文台乗鞍観測所のコロナグラフを移設し、太陽コロナの長周期変動を観測する安定したコロナ定常観測環境を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記の通り、太陽地球圏環境予測に関わる様々な国際共同研究を拡大する活動を実施した。(1)米国のトップ研究者を我が国へ招聘し太陽フレアとコロナ質量放出の予測に関する国際共同研究を順調に発展させることができた。(2)欧州の太陽フレア予測プロジェクトとの連携を強化することができた。また、欧州の宇宙天気会合で本領域の企画セッションを実施し、本領域の国際展開を強化することができた。(3)我が国の若手研究者を米国に長期派遣し、太陽の気候影響を調べるために必要な高速化大循環モデルを開発した。(4)英国に我が国の大学院生を派遣し、太陽黒点に関する古文献の調査を行い、マウンダー極小期に関する貴重な情報を得ることができた。(5)中国とは古気候研究、太陽コロナ研究に関する共同研究の基盤を築くことができた。(6)さらに、ロシア、ナイジェリア、インドネシアで若手研究者を対象とした国際スクールを実施し、国際的な人事育成に貢献した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)米国との共同研究:我が国の若手研究員をNWRA(ボルダー)に派遣し、太陽フレア予測モデルの国際比較を実施し、その成果を論文として出版する。また、ミネソタ大学に研究者を派遣し、日本の「あらせ」衛星と米国のVan Allen Probes衛星のデータを使った地球磁気圏における波動粒子相互作用に関する共同観測を拡大する。また、研究者をHAOに派遣し、次期太陽周期活動予測に関する国際共著論文を取りまとめる。さらに、研究員をNCARに派遣し、理想化高速版Climate-ChemistryモデルDCPAM-CEHMの開発と数値実験に関する国際共同研究を進める。(2)欧州との共同研究:我が国の大学院生を英国等に派遣し、過去の黒点スケッチのデータベース化に関する共同研究を進め、グランドミニマムのモデル化の資料を構築する。また、研究者がフィンランド気象研究所に滞在し、電離圏トモグラフィを用いた電波伝搬シミュレータに関する共同研究の可能性を検討する。さらに、英国から大学院生を名古屋大学に招聘し、噴出型の太陽フレアの発生条件を我が国が開発したデータ駆動型シミュレーションによって研究する。ポーランドから研究員を招聘し、IBEX衛星のデータと我が国のIPS地上観測データを用いた共同研究を実施する。ハンガリーのEotvos大学の研究者を招聘し、磁気圏波動に関する共同研究を実施する。(3)中国との共同研究:中国雲南天文台フーシャン湖太陽観測所での遠征観測および彩層微細構造に関する共同研究を実施する。雲南省麗江市に移設した国立天文台乗鞍観測所のコロナグラフを用いた太陽コロナの長周期的研究と安定したコロナ定常観測の共同研究を拡大する。(4)その他:名大ISEEにて太陽コロナのデータ駆動型モデルに関する国際ワークショップを実施し、各国で開発されているモデルの比較研究を進め、国際共著論文として出版する。
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次年度使用額が生じた理由 |
名古屋大学で開催した太陽フレア予測及び太陽周期活動予測に関する国際ワークショップについて、連携している名古屋大学宇宙地球環境研究所の共同利用・共同研究として採択されたため、本課題から支出すべき経費が当初計画を下回ることになった。このため、次年度使用額が生じた。また、ベルギーへの若手研究者の派遣、韓国からの若手研究者の招聘をそれぞれ予定していたが、先方との日程調整ができずに、次年度に延期した。ワークショップについては次年度に成果を取りまとめ出版するための経費として本経費を利用する。派遣及び招聘については改めて日程調整を行い、次年度に実施する予定である。
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