研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
15K21713
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
深瀬 浩一 大阪大学, 理学研究科, 教授 (80192722)
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研究期間 (年度) |
2015-11-06 – 2021-03-31
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キーワード | 中分子 / 反応集積化 / 生物機能制御 |
研究実績の概要 |
近年、低分子でも高分子でもない中分子領域の化合物(分子量500-3000程度)が、高い分子認識能と特異性を有し、特定の生体分子や細胞に選択的に作用して、その応答を精密に制御できることから、高次生物機能分子として世界的に注目を集めている。しかし、生物活性天然物などの中分子の多くは構造が複雑であるため、一般に合成に多大な労力と時間が必要であり、機能分子としての実用化が困難である。そこで本申請では、合成プロセスの飛躍的な効率化により、中分子を実用的な生物機能分子として創製ことを目指している.そのためには国際的な視点に立って研究を進めるとともに国際共同研究を強く推進する必要がある.本年度は,“The 5th International Symposium on Middle Molecular Strategy(ISMMS-5)”を主催した.なお,本シンポジウムは複数の国際会議とジョイントシンポジウムとすることで,より多くの招待講演者を招くとともに参加者数も100名を大きく超える規模とした.加えて,3つの国際シンポジウムを共催した.また,本分野における海外の一流研究者を大学に長期滞在者として招き,共同研究のための綿密な打ち合わせも行った.加えて多くの研究者の長期,短期での海外派遣も支援した.特に長期の海外派遣を積極的に行い,密接な共同研究を推進した.短期派遣においては世界的に権威のある本領域と関連する学会に積極的に人材を派遣することで,本領域のプレゼンスを示した.長期派遣においては,実際に人材が交わることで,本領域における国際共同研究が質,量ともに大きく向上した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本領域は、先の新学術領域研究「集積反応化学」を発展させて、機能性中分子の創製に結びつけることを目的としており、特に世界で本領域のみが有する中分子鍵化合物を合成し、世界中の研究者に供与する体制を築いて本領域を中分子機能創製の国際的なハブ拠点とすることを目指している。この構想を実現するために、1) 領域活動ならびにそれに連携させた学会活動を通じた国際交流と情報発信、2) 領域内の共同研究を背景として、個々の班員の国際共同研究を発展させた共同研究ネットワークの構築、を二つの柱にして、国際活動の支援を行ってきた. 具体的な支援活動として、“The 5th International Symposium on Middle Molecular Strategy(ISMMS-5)”を主催した.なお,本シンポジウムは 複数の国際学会とジョイントシンポジウムとした.加えて,国際シンポジウム“The 18th International Symposium on Novel Aromatic Compounds (ISNA-18)”,“The 27th International Society of Heterocyclic Chemistry Congress”,“第14回アジア最先端有機化学国際会議ICCEOCA-14”を共催した.多くの班員を国際学会,国際シンポジウムに派遣し本領域のプレゼンスを示した.また,共同研究促進のために研究者の招聘,学生を含めた若手研究者の長期海外派遣なども積極的に行ってきた.特に3ヵ月程度にわたる長期の海外派遣を積極的に行い,密接な共同研究を推進した.これにより多くの国際共同研究が実施された。
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今後の研究の推進方策 |
領域代表者は生物機能分子創製のための医学者、生物学者を中心とした国内外の数十カ所の研究者との国際的な共同研究ネットワークの基盤をすでに構築しており、これを強化・拡大することで本領域研究が中分子研究のハブとして機能する国際的ネットワークを構築してきた。 また,国内外との化学合成・分子機能連携を進め,若手研究者や学生を派遣することによる共同研究の推進と情報発信を図ってきた.具体的には1年で30人程度の班員の海外短期派遣を行った.また,1年あたり3名程度の長期派遣も行い,積極的な共同研究の推進した.さらに産業界におけるイノベーションを導くために,領域代表や計画班員の参画するフロー・マイクロ合成研究会などの学協会や直接的な共同研究を通じて,化学企業や製薬企業と有機的,実質的に連携し,画期的なイノベーションに結びつけることを目指していく.これまで同様に国際学会、シンポジウムを積極的に開催し、本研究領域における日本のプレゼンスを示すとともに、国際共同研究を引き続き強く推進する。また,本領域のWebサイトの充実などにより,国内外への情報発信も積極的に行う.本領域で合成した化合物は様々な生物活性試験などに広く利用されるよう、化合物バンクへと登録を検討することで,本領域が中分子研究のハブとしての役割を果たせるようにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定通り,国際学会の開催や研究者の招聘や海外派遣を積極的に行っている.実際,“The 5th International Symposium on Middle Molecular Strategy(ISMMS-5)”を主催するとともに,複数の国際学会を共催した.それに加えて,多くの国外の研究者を招聘し,班員との積極的な交流を図っている.また,多くの研究者の海外派遣を行ってきた.一方で,本年度は偶然にもアジアや近隣の国からの研究者の招聘が多く,班員からの派遣に関しても近隣の国への派遣や滞在費が比較的安価な地域への派遣が多かった.シンポジウムの開催に関しても,たまたま会場費を安く抑えられた場合があった.また、ジョイントシンポジウムとしたことで,想定以上の費用対効果は得られている.今年度以降に関連分野の国際学会が多く開催されることが明らかになり,それらの学会の共催を検討するとともに、それらへの派遣費用として,今年度以降に持ち越すこととした.
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