国際活動支援班
平成27年度では,いくつかの国際共同研究の立ち上げとして,それぞれ以下のような活動を行った.医学班(A01-1)では、ニューヨーク大学放射線科に研究者を1名派遣、肝臓造影ダイナミック検査で用いられているGRASP撮像法(スパースモデリング法[SpM法]を活用した撮像法)の詳細とデータ処理方法を学んだ。データ処理では、派遣した研究者が独自に作成し、最新の手法である交互方向乗数法(ADMM)を取り入れたプログラムを開発し、再構成に必要な時間が短縮した。地球科学班(A02-1)では,2011東北地方太平洋沖地震に伴う津波堆積物の地球化学的特徴およびSpMのデータ駆動解析による海成堆積物との判別に関して,国内で採取された各種データと国際的に収集された数理統計に関する各種情報を駆使して,国際共同作業により従来にない精度での判別を可能にするとともに,地球科学分野におけるSpM研究の進展をはかった.惑星科学班(A02-2)では、最もリモートセンシングデータの揃っている火星に対し、SpMの効果的な研究対象として、地質学的・地形学的な研究を進めた。特に(1)火星北部低地にみられるローブ状地形の分布と特徴的な浸食地形の欠如を、津波堆積物の存在を仮定することで統一的に説明できること、(2)北極域の氷床に見られる溝構造の層序から、その氷床が過去に推定されたより遥かに安定している可能性があること、(3)北部平原に流れ込む一部のアウトフローチャネルの底面に見られる黒色かつパッチ状の構造が、この地域の特殊かつ近年の活動度を示す可能性があることなどを明らかにした。セミパラメトリックベイズ班(C01-2)では,University College Londonとの共同研究をさらに推進するため,連携研究者1名を派遣し,関連する研究者3名を受け入れ,特にセミパラメトリック状態空間モデルのモデルパラメータ推定法と,カーネル法による新しい統計的検定法に関する検討を行った.
2: おおむね順調に進展している
医学班(A01-1)では、スパースモデリング法を活用した高速撮像法として広く活用されいているGRASP撮像法の詳細とデータ処理方法の研究を進めた。さらに最新の交互方向乗数法を取り入れたプログラムを独自に開発するなど、順調に研究が進捗した。さらにMRIのハードウェアに関する理解を深めて、スパースモデリング法のより高性能化を目指した研究を進めている。地球科学班(A02-1)では,豪州ニューサウスウエルズ大学のChatherine Chague-Goff博士を2ヶ月間招聘して,共同で2011津波堆積物の数理統計解析の作業を実施した.この解析では,本研究で開発したSpMによる新規手法を適用し,データ駆動解析を進めるとともに,双方が保有する津波堆積物の分析結果をもとにデータベースを構築した.惑星科学班(A02-2)では、当初予定通り、Alexis Rodriguez博士を招へいして、各国の火星探査機の取得したリモートセンシングデータの整理検討を開始した。効果的にSpMを応用でき、かつSpM研究の発展につながる有望なテーマの洗い出しを行い、主にアウトフローチャネル底面の黒色のパッチ状構造の検出や、北部平原に見られる地形的特徴、極域の溝構造やクレーターの抽出などを行った。セミパラメトリックベイズ班(C01-2)では、2016年2月に連携研究者のSong Liuが,海外研究協力者であるUniversity College London(UCL)・Gretton氏の研究室を訪問し,モデルの適合度の検定法に関して共同研究をスタートさせた.また,2016年3月に,Gretton氏の来日に合わせ,Gretton研究室の博士学生2名,および元研究員(現Oxford大)Sejdinovich准教授を本科研費にて招へいし,セミパラメトリック状態空間モデルに関する共同研究を行った.
前年度での国際共同研究を継続的に行っていく.具体的には,医学班はGRASP法の研究,地球科学班では,歴史津波堆積の元素組成および地球化学的データの収集および解析,惑星科学班では,火星リモートセンシングデータへのSpMの適用を行っていく.
地球科学班(A02-1)では平成27年度において,仙台市若林区において歴史津波堆積物の地質調査およびジオスライサーによる掘削調査を実施した.招聘研究員が滞在する2月から3月にかけて現地調査を継続したが,土地所有者の許諾,農用地の利活用および天候状況等の理由によって,招聘期間内で当初の掘削予定数にまで達することが困難であった.惑星科学班(A02-2)では平成27年度の1月に招へい予定だった研究者が、ビザの関係で来日が2月16日と遅れてしまったことから、旅費(50万円)を次年度に繰り越し、その分の同博士の滞在を次年度延長することとした。セミパラメトリックベイズ班(C01-2)では,招へい研究者の都合により,本科研費による研究者の招へい時期が遅れ,2016年3月と2016年4月の2つの年度を別れることとなった.そのため2015年度に必要な旅費が計画よりも少なくなり,約13万円の余剰が出た.
地球科学班では,現地調査に必要な経費(掘削調査および津波堆積物分析費:約80万円)は次年度に繰り越して,平成28年度内に仙台市若林区での掘削調査および解析作業を継続することとした.惑星科学班では,上記の通り,招へいする研究者の旅費として計上する.セミパラメトリックベイズ班でも同様に,招へい研究者の滞在旅費として計上する.
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件)
Chemosphere
巻: 144 ページ: 1241-1248
10.1016/j.chemosphere.2015.09.078.
環境と測定技術
巻: 42 ページ: 14-21