研究領域 | スパースモデリングの深化と高次元データ駆動科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
15K21718
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡田 真人 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (90233345)
|
研究分担者 |
駒井 武 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (30357024)
富樫 かおり 京都大学, 医学研究科, 教授 (90135484)
福水 健次 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 教授 (60311362)
本間 希樹 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 教授 (20332166)
宮本 英昭 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00312992)
|
研究期間 (年度) |
2015-11-06 – 2018-03-31
|
キーワード | スパースモデリング / データ駆動科学 / MRI画像 / 津波堆積物 / 地球化学調査 |
研究実績の概要 |
医学班(A01-1)では、ニューヨーク大学放射線科に研究者・藤本晃司を派遣した。彼は肝臓造影ダイナミック検査で用いられているGRASP法(スパースモデリング法[SpM法]を活用した撮像および画像再構成法)を研究し、この手法を発展させて、呼吸位相が同じデータをグループ化し、非剛体位置合わせを行う動きベクトルを定式化に組み込むことで動きによる画質劣化を最小限にとどめた画像再構成を新たに提案し、2017年4月末の国際学会(ISMRM)で報告した。 地球科学班(A02-1)では,2011東北地方太平洋沖地震に伴う津波堆積物および歴史津波堆積物を対象として,地球化学的特徴およびSpMのデータ駆動解析による海成堆積物との判別を可能にした.国内で採取された各種データと国際的に収集された数理統計に関する各種情報を駆使して,国際共同作業により従来にない精度での判別を達成し,地球科学分野におけるSpM研究の進展をはかった. 惑星科学班(A02-2)では、最もリモートセンシングデータの揃っている火星に対し、SpMの効果的な研究対象として、地質学的・地形学的な研究を進めた。火星北部低地にみられるローブ状地形の分布と特徴的な浸食地形の欠如を、津波堆積物の存在を仮定することで統一的に説明できることを示し、Scientific Reports誌の論文として出版した。さらにノクティスラビリンサス地域の陥没地形が地下水の流出に起因することを示し、Planetary Space Science誌で公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
医学班(A01-1)では、スパースモデリング法を活用した高速撮像法であるGRASP法を改良する研究を進めた。その結果を国際学会(ISMRM)で報告するなど、順調に研究が進捗した。 地球科学班(A02-1)では前年度から引き続き,本年度においても再度2ヶ月間Chatherine Chague-Goff博士を招聘して,仙台市若林区および南相馬市小高区において歴史津波堆積を採取するための現地調査を実施した.本年度はXRFによる元素分析に加えて,高精度のXRFコアスキャナー分析装置を用いて,長手方向に連続的な元素組成の分布を把握した.これらの元素分析および数理解析手法を駆使して,津波堆積物の判別方法を確立した.これらの研究成果を,研究論文および国際研究集会において発表した. 惑星科学班(A02-2)では、予定通りAlexis Rodriguez博士を招へいして、各国の火星探査機の取得したリモートセンシングデータの整理検討を行った。効果的にSpMを応用でき、かつSpM研究の発展につながる有望なテーマの洗い出しを行い、特に火星北部低地にみられるローブ状地形の分布と特徴的な浸食地形の欠如を、津波堆積物の存在を仮定することで統一的に説明できることを示した。これらの成果は国際誌論文2本にまとめた。 セミパラメトリックベイズ班(C01-2)では、博士研究員である金川が,Philipp Hennig グループリーダーを訪問し,カーネル法の数値積分への応用に関して議論を行い,今後の研究計画を立案した.また,C01-2班代表者の海外研究協力者であるArthur Gretton 准教授と,共同研究者であるSejdinovich准教授を訪問し,カーネル法による適合度検定に関してすすめてきた研究成果の論文投稿準備を行うとともに,セミパラメトリック状況下でのモデルパラメータ推定に関する共同研究を推進した.
|
今後の研究の推進方策 |
医学班(A01-1)では、 引き続きGRASP法の研究を継続する。派遣していた研究者(藤本)が帰国し、平成29年度より研究分担者として医学班に参加する。GRASP法によるMRI撮影、画像再構成を帰国後に展開すべく、派遣先のニューヨーク大学と共同研究をすすめている。非剛体位置合わせを組み込んだGRASP法についてはデータ解析を追加し論文投稿予定。 地球科学班(A02-1)では、これまでの歴史津波堆積物の地質試料およびジオスライサーによる掘削試料を用いて,引き続きSpM手法を駆使した精密な解析作業を実施する.具体的には,平成28年度までに実施した現地調査で取得した30本を超える歴史津波堆積物を含むコア試料を用いて詳細な分析作業を進める.平成29年度は招聘研究の予定がないため,これまでのデータの解析を総合して共同で報告書を作成する. 惑星科学班(A02-2)では引き続き主に火星画像のデータ解析を継続するため、Alexis Rodriguez博士を招へいする。火星北部低地にみられるローブ状地形と特徴的な浸食地形の検出や、北極域の氷床に見られる溝構造の判別に関する地質学・地形学的な検討を進めながら、B班、C班と共に、膨大な画像を対象として、比較的特徴の明瞭なクレーターの検出のための機械学習を進めることを予定している。 セミパラベイズ班(C01-2)では、今まで推進してきた,カーネル法による適合度検定と,セミパラメトリック状況下でのモデルパラメータ推定に関する共同研究の成果をまとめて,論文を投稿する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
セミパラメトリックベイズ班(C01-2)では,H28年度に招へい予定であった,インド工科大・Kaul Manohar助教の日程の調整がつかず,H29年度5月から8月に3か月間招へいすることに変更となった.そのためにH28度に使用を計画した滞在費約70万円をH29年度に繰り越して使用することになった.
|
次年度使用額の使用計画 |
H28年度に招へい予定であったインド工科大・Kaul Manohar助教の滞在費として約70万計上する。
|