研究領域 | 脂質クオリティが解き明かす生命現象 |
研究課題/領域番号 |
15K21738
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
有田 誠 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (80292952)
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研究分担者 |
有田 正規 国立遺伝学研究所, 生命情報研究センター, 教授 (10356389)
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研究期間 (年度) |
2015-11-06 – 2020-03-31
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キーワード | リピドミクス / 国際連携 / 国際標準 / データベース |
研究実績の概要 |
国際支援室では2018年度、合計5名の研究者派遣を実施した。うち1名が日本から海外連携拠点へ向けた派遣であった。海外より日本に招聘した研究者の満足度は高く、マレーシアのケバングサーン大学とは、受け入れ拠点である国立遺伝学研究所の間で国際交流協定を締結、2019年度の共同研究に発展した。また中国四川省農学アカデミーの農産加工科学技術院は、本招聘を元に2019年度に自国の国際交流資金を獲得し、2019年度に研究者が日本に長期滞在する予定である。支援の概要や対象者の体験記はこれまでと同様、領域ニュースレターに掲載している。また、海外重要拠点の一つ、シンガポール大学のSLINGグループとは、リピドミクスの解析法や命名法の標準化に関する論文を共同執筆し、現在も国際コンソーシアムによる声明論文を用意している。 リポクオリティ・脂質データベース(LQDB)からは、45種のグリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、中性脂質に対応する理論スペクトルを作成する機能を公開した。ブラウザでアクセスできる画面からユーザが脂肪酸の鎖長範囲や不飽和度、アダクトを指定すると、対応する脂質のマススペクトルを生成、ダウンロードできる。このライブラリ生成機能を胆汁酸や簡単な構造の糖脂質に拡張しており、リピドミクスで扱われる脂質クラスを網羅することを目指している。スペクトルには測定装置依存の部分もあるため、必須の情報とそうでない部分をパラメータ指定で調整できる工夫も試みている。またMassBankデータベースを通じた標準スペクトルの公開も担当し、本領域で取得した脂質の実測スペクトルは当該コンソーシアムのGitHubサイトおよびデータベースからアクセス可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コーディネータ室:領域ホームページの英語版、日本語版を、公募班の成果も含めて常時アップデートしてきた。国際連携オフィスの情報は中国語版も作成、更新している。2019年6月に東京で開催される第60回国際脂質生物学会議 (ICBL)に合わせて、国際連携室および連携するシンガポール大学で、サテライトワークショップを主催する。当該ワークショップに参加する海外研究者(学生含む)の公募と選抜を実施した。派遣事業では以下を支援した。海外から日本(3 名)Liu Jiajia (中国)、有田グループ、2週間;Go Hoe Han (マレーシア) 、有田グループ、3ヶ月;Ville Koistinen (フィンランド)、有田グループ、1週間。日本から海外(1 名)Ipputa Tada (日本) 、Karolinska Institutet(スウェーデン)、2ヶ月。 データベース及び国際標準化:リポクオリティ・データベース(LQDB)に45脂質分子種の理論スペクトルを作成する機能を付加した(http://lipidbank.jp/wiki/Special:GenerateSpectra)。グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質の各クラスについて、ユーザが鎖長範囲や不飽和度、可能なアダクトを指定すると対応するスペクトルライブラリを生成できるようにした。脂質の名称は国際標準に準拠している。この脂質ライブラリは計画班で作成するMS-DIALソフトウェアにも格納され、このソフトウェアを利用する研究グループにも利用されている。理論スペクトルに対応する実測スペクトルについては、MassBankデータベースに過酸化脂質386レコード、グリセロリン脂質1024レコードを登録した。また、定量値や分布を閲覧するLQDBのインターフェースも改良しつづけている。
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今後の研究の推進方策 |
コーディネータ室:最終年度にあたるため、コーディネータ室が中心となりシンガポール大学と合同で国際ワークショップを開催する(国際会議ICBLのサテライトイベント)。本ワークショップの主眼はリピドミクス情報解析とする。リピドミクスの国際標準を周知すると同時に分子同定のノウハウについて参加者全員で協議する予定である。ワークショップ後はニュースレターの発行および数件の招聘活動を行う予定である。 データベース及び国際標準化:例年に引き続き、リピドミクスの国際コンソーシアムに積極的に参加して、国内研究成果のアピールおよび国際共同研究体制への積極的な貢献に務めるとともに、データ公開を進める。また、質量分析センターを中心に収集された実測に基づく脂質マススペクトルはMassBankデータベースに投稿し、それに基づいて作成する理論スペクトルライブラリをできるだけ多くの人に利用してもらうように工夫する。また質量イメージングセンターで取得された各組織の脂質分布のイメージング画像をリポクオリティ・データベースに掲載し、各組織における脂質分子種の局在や分布を視覚的に把握できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に計画していたワークショップが平成31年度6月の国際会議と同時開催されることになり、そのための招聘費用を次年度に繰り越す必要が生じた。また、海外からの研修応募数が減少しているため、招聘費用として計上していた予算も次年度に繰り越す必要が生じた。
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