研究領域 | がんシステムの新次元俯瞰と攻略 |
研究課題/領域番号 |
15K21741
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮野 悟 東京大学, 医科学研究所, 教授 (50128104)
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研究期間 (年度) |
2015-11-06 – 2020-03-31
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キーワード | がん / システム生物学 / ゲノム科学 / バイオインフォマティクス / 人工知能 |
研究実績の概要 |
相互派遣企画委員会(小川誠司)並びに国際共同研究推進委員会(稲澤譲治)において、メールによる合議により企画並びに国際共同研究推進に関する議論と意思決定を行った。海外の研究先への派遣、国際共同研究を推進するために海外から研究者を招聘、および研究者を派遣してネットワークを形成することが主な活動となった。 平成30年度は、平成29年度から年度をまたがる形で平成30年3月~4月にタイ・チュラロンコン王立記念病院からがんゲノミクスの研究者1名を京都大学医学研究科に招聘して共同研究を実施した。5月にメキシコEl Colegio Nacionalへ3名を東大医科学研究所から派遣し、バイオインフォマティクス・システムズバイロジー及びがん研究に関する国際連携拠点の形成を開始した。令和元年に継続して連携することが決まった。6月には、英国サンガー研究所から研究者1名を招聘し、名古屋、京都大学においてがんゲノミクスに関する共同研究の打合せと今後の計画について詳細を詰めた。10月には、米国ミシガン大学よりバイオスタティスティクスの研究者1名、デンマーク・コペンハーゲン大学より研究者1名を東大医科学研究所に招聘して、癌のゲノム・オミックスデータ解析のための統計手法の開発についての研究の打合せを実施した。また、スウェーデン・ヘルシンキ大学よりがんゲノミクスの研究者を京都大学医学研究科に招聘し、がんゲノム解析についての研究打合せを行った。11月には、香港大学より7名のバイオインフォマティクスおよびゲノミクスの研究者を東大医科学研究所に招聘し、セミナー等により連携を深めた。これらの活動は、若手国際ネットワーク形成に大きく貢献したと考えている。また、こうした国際共同研究をふくめ複数の国際共同研究を実施するにあたり、ヒトゲノム解析センターのスーパーコンピュータを利用するのための支援を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人材の交流が定着し、国際共同研究及びネットワーク形成が具体的に進展した。特に、若手の主導により交流が行われヒューマンネットワークが形成されていることは、将来に向けての人材育成の観点からも重要な成果である。シニアな研究者は既に独自のネットワークをもって活動をしているが、若手が将来に向けて国際的な研究者コミュニティをリードしはじめたことは意義深い。国際社会における我が国の存在感を維持・向上するための方針・戦略に基づき、スパコンリソース及び旧新学術領域「システムがん」及び本新学術領域で整備したソフトウェアの国際利用を継続して行った。特に、スーパーコンピュータ利用の支援を行うことができ、本領域の特性が活かされた。東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターのスパコンSHIROKANE(1.5PFLOPS計算システム、高速ディスクアレイ30PB (Lustre File System)、ニアラインアーカイブ100PB)が国際共同研究を強く推進するという大きな意義があった。こうした活動の実績は、世界トップジャーナルを含む多くの専門誌に大きなインパクトをもって報告されている。さらに、人工知能のがん研究への活用については、世界にわたるアウトリーチ活動のなかで報告してきたことにより、本領域がその拠点となっていることが認識されるにいたった。そして、人工知能活用をとおしてがんにかぎらず、生命科学研究の方法論を新次元へと昇華していく国際連携がはじまっている。このように、研究資源と人材が国際連携のために十分に機能していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの企画を継続・更新し、相互派遣企画員会において派遣と受入についての企画を検討し、海外の研究グループとの共同研究を推進するとともに、若手ネットワーク形成を支援する。応募者に対しては、随時委員会においてメール審議を行い、派遣する研究員を決定する。また、海外からの受入れについても同様に、領域内の研究室への受け入れ研究員の決定を行う。派遣及び受入の期間については、効果をねらい、短期から長期まで経費の範囲内で柔軟性を持たせる。国際共同研究推進委員会においては、がん研究の新展開に関する国際動向の分析を行う。その他の事項についても、前述の活動を継続して実施する。令和年度は、米国Broad Institute及びNew York Genome Center、Icahn School of Medicine at Mount Sinaiへ複数の若手人材を長期間派遣する予定である。
人工知能技術のがん及び生命科学研究への導入については、Watson for Genomicsでは米国本社の開発部と密に連絡をとってきたが、国際共同研究を推進する体制を継続する。さらに、これまでの研究でWatson for Genomicsだけでは不十分なところが判明しており、本領域の真骨頂でもあるグラフ構造からの知識発見のためのDeep Tensorなど説明可能な人工知能技術の調査と導入を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に派遣を計画した複数の研究者の米国への長期派遣が令和元年に実施されることになったため。また、国際共同研究の進展し、スーパーコンピュータの利用支援のための経費を令和元年のために確保しておく必要があるため。
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