国際活動支援班
1) スウェーデンLund大学大学院生を招聘し、寒冷地の犬TRPA1遺伝子をクローニングし、機能解析を行った。米国イリノイ大学に大学院生を派遣し、人工脂質二重膜実験法を学ばせた。(富永)2)アミロイドβが細胞内へ輸送されて小胞体ストレスを引き起こすメカニズムについて、脂質ラフト依存型のエンドサイトーシスとの関連に着目して研究した。(高木)3) 温度情報伝達に関わる新規の分子生理機構をシンプルな実験動物を使い解析を進めた。(久原)4) Hikeshiの点変異で、ヒト遺伝性疾患である白質ジストロフィーが誘引されることがわかった。5) 温度の変化に伴う形質膜の物性変化を評価するため、膜粘弾性を計測する方法の確立に取り組んだ。(梅田)(今本)6) 神経細胞の分化と温度の関係を明らかにするための実験準備として、神経様細胞PC12を用いて細胞内温度イメージング法を確立した。(原田)7) ストレス時における細胞内局所発熱依存的なストレス顆粒形成のメカニズムに着目し、細胞内局所発熱とストレス応答因子の関係を検討した。(岡部)8) 米国オレゴン健康科学大との国際共同研究を進め、飢餓時の代謝抑制と摂食促進を担う神経細胞を発見した。(中村)9) マウスの肝臓におけるインスリン作用の低下が、褐色脂肪の熱産生の低下を引き起こし、体重増加の要因となることを見出した。(山田)10) G蛋白質共役受容体シグナルを標的とした探索研究を推し進めた結果、体温の日内変動パターンを規定する可能性のある新規分子を同定することに成功した。(土居)11) 環境温度による快・不快情動生成機構を解明するため、自由行動下マウスからのリアルタイム神経活動計測・制御法を開発した。(南)12) TRPV4が網膜ミュラーグリアの突起において体温下で突起容積増大に伴い活性化し、ATP放出を惹起することを見いだした。(柴崎)
2: おおむね順調に進展している
1) 犬TRPA1はヒトやげっ歯類TRPA1と同様な機能を持っていた。人工脂質二重膜実験法を修得した。(富永)2) トロント大学Kagan Kerman研究室へ博士後期課程大学院生を派遣して、表面プラズモン共鳴法の技術習得、情報交換を行った。(高木)3) 温度情報伝達に関わる新規分子の生化学解析と温度応答神経の定量化装置の開発を進展させた。(久原)4) HikeshiとHsp70の温度依存的な結合が、熱ストレスで活性化されるHikeshi輸送に重要であると示すことができた。(今本)5) 独国ハイデルベルク大学に大学院生を派遣し、ショウジョウバエ細胞における膜粘弾性評価系の確立を行った。6) 米国The Marine Biological Laboratoryの谷知己先生を招聘し、ニワトリ後根神経節の神経軸索を伸長させる方法を確立した。(原田)7) 新規ストレス応答因子を発見した英国ケンブリッジ大学医学研究所の研究者らと打ち合わせを行った。(岡部)(梅田)8) 昨年度米国の研究室に滞在して実施した実験データの解析を進め、論文発表した。(中村)9) 肝インスリン作用の低下に由来し褐色脂肪の熱産生低下を引き起こす臓器間ネットワークにおいて、迷走神経肝臓枝の関与を否定した。(山田)10) リューベック大学Henrik Oster教授、ならびにレーゲンスブルク大学Ulrich Hammes教授、ストラスブール大学Etienne Challet上級研究員に直接面会し、専門の技術的指導を受けた。(土居)11) マサチューセッツ工科大学に研究者を派遣し、自由行動下マウスからのリアルタイム神経活動計測法について最先端の技術を習得および情報交換をおこなった。(南)12) 恒温動物の高度な視覚情報処理に体温+微細構造の容積増大に伴うTRPV4活性化が関与している可能性を見出した。(柴崎)
1) スウェーデン ルンド大学、ドイツ エルランゲン大学との共同研究を推進する。(富永)2) アミロイドβが引き起こす神経細胞毒性のメカニズム解析並びにアルツハイマー病の診断、予防、治療に関する共同研究を模索する。(高木)3) 温度情報伝達に関わる分子の遺伝学的解析と温度応答の神経回路解析を進める。(久原)4) 疾患変異をもつHikeshiの細胞内挙動を解析し、病体が発現するメカニズムを明らかにする。(今本)5) 引き続き海外共同研究者と綿密に情報交換を行いつつ、自国研究室において、習得した技術を温度生物学に関する実験に適用する。6) 神経細胞の軸索伸長と細胞内温度の詳細な解析を行い、神経細胞が自発的に熱産生を行うことで自ら分化過程を制御しているという我々の仮説を検証する。(原田)7) ケンブリッジ大学医学研究所に研究者を派遣し、新規ストレス応答因子の機能解析法を習得する。また、この技術を用いてストレス時における細胞内発熱の機能解析を行うことで温度シグナリングの分子機構を解明する。(岡部)8) 発見した飢餓時の代謝抑制と摂食促進を担う神経細胞のさらなる生理的役割について解析を進める。(中村)9) 肝インスリン作用の低下に由来し褐色脂肪の熱産生低下を引き起こす臓器間ネットワークにおいて、液性因子の関与を検討する。(山田)10)シンシナティ大学との共同研究が順調に進んでいるため、担当者の濱田文香助教を招聘し共同研究を加速させたい。(土居)11)習得した技術を用い、温度生物学に関する実験のセットアップをおこなう。必要に応じて、マサチューセッツ工科大学を再訪、あるいは他大学の研究者との共同研究を進める。(南)12) 温度変化と網膜ミュラーグリアのTRPV4活性化強度に相関関係があるのかを解析していく。(柴崎)
平成28年度は代表者、分担者、公募班員の国際共同研究は大きく進展したが、当初計画していた海外との打ち合わせと調査について、先方機関との調整が順調に進まず平成28年度中の遂行が一部困難になり次年度使用額が生じた。
平成28年度に遂行できなかった国際共同研究については平成29年度の研究計画に含めて推し進める予定である。平成29年度も「温度生物学」国際共同研究推進のため、上記「今後の推進方策」に記述したごとく計画されており、大きく進展することが期待される。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (27件) (うち国際学会 10件、 招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Cell Metab.
巻: 25 ページ: 322-334
10.1016/j.cmet.2016.12.002
J Med Genet.
巻: 53 ページ: 132-137
10.1136/jmedgenet-2015-103232
FASEB J.
巻: 30 ページ: 1306-1316
10.1096/fj.15-281576
Open Biol.
巻: 6(6) ページ: 160042
10.1098/rsob.160042
Front. Physiol.
巻: 7 ページ: 447
10.3389/fphys.2016.00447
http://www.nips.ac.jp/thermalbio/