研究領域 | 脳・生活・人生の統合的理解にもとづく思春期からの主体価値発展学 |
研究課題/領域番号 |
16K21720
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
笠井 清登 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80322056)
|
研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2022-03-31
|
キーワード | 思春期 / 主体価値 / コホート研究 / リカバリー / Well-being(ウェルビーイング) / 国際共同研究 / 国際比較研究 / 若手育成 |
研究実績の概要 |
思春期科学国際連携ネットワークを発展的に強化した。主に英米豪加の思春期学研究者との連携(下記1~4)と海外派遣後の研究(5)を継続した。 (1)英国のブリストル大学のSarah Sullivan博士らALSPAC研究チームとTTC(Tokyo Teen Cohort study)研究チームの間で、英国ALSPACコホートとTTCデータを用いたクロスコホート研究を行い、思春期の主体価値がその後の精神的健康に及ぼす影響について、異文化間での差異について検証した。(2)英国ロンドン大学のMarcus Richards博士と定期的な連絡を通じて、1946British Birth Cohortデータを用いた共同研究を進め、思春期の主体価値と自己制御の相互作用が高齢期のウェルビーイングに与える影響について、成果を発表した。(3)米国Fordham大学のJordan DeVylder博士との共同研究を進め、2本の論文を国際誌に投稿した。(4)リカバリー研究は、精神疾患にともなう主体価値の不調からの回復の心理過程に関する質的研究を進め、国際誌に投稿した。 (5)海外派遣は、平成31年度までに派遣を終えた研究員4名(豪国1、英国2、オーストリア1)が、研究を継続した。豪国派遣研究員は、TTCや豪国コホートデータを用いた共同研究を継続し国際誌に研究成果を投稿公刊、英国派遣研究員1名は共同研究を継続し、もう1名は大規模脳画像データと機械学習技術を用いた研究の継続を、オーストリア派遣研究員は、安静時fMRIから報酬系の変化及びうつ症状との関連解析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、英国MRCとの研究では、1946 British Birth Cohortデータにて、思春期の主体価値と自己制御の相互作用が、高齢期のウェルビーイングを予測することを示した研究を投稿・公刊した(Yamasaki et al Posit Psychol, 2020)。英国Bristol大学との研究では、Sarah Sullivan博士らALSPAC研究チームとTTCチームとの間で、両コホートデータを用いたクロスコホート研究を行い、児童思春期における主体感の発達が十分でない場合には,精神的健康悪化の指標である精神病症状体験の体験リスクが高まることが,日英双方のコホートデータから共通して確認出来た(Sullivan, Yamasaki et al Front Psychol, 2021)。米国Fordham大学との共同研究では,二つの精神病症状体験に関する縦断研究の論文投稿を行った。 リカバリー研究は、精神疾患をもつ人の主体価値の不調からの回復に関するインタビュー調査について解析をすすめ、主体価値からの回復過程とその促進因子を明らかにし、論文投稿を行った。 海外派遣は、派遣後の研究員4名が研究を継続した。豪国派遣研究員は、TTCや豪国コホートデータを用いた共同研究の成果を投稿・公刊した(Fujikawa, Patton et al Acad Pediatr, 2020)。英国派遣研究員1名は、共同研究を継続し論文投稿や学会発表を実施、もう1名は、大規模脳画像データと機械学習技術を用いた個人差の神経基盤理解等の論文投稿等を継続した。オーストリア派遣研究員は、安静時fMRIから報酬系の変化及びうつ症状との関連解析を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
米国ハーバード大学との共同研究を完成させるため、若手を派遣する予定である。しかしながら新型コロナウイルス感染症のため難しい場合には、オンライン等での連携により目標を達成する。また、派遣研究を終了した海外派遣研究員については、各自の研究を進め、結果をまとめ、国際学会発表、専門誌投稿・公刊を進める。 コホート共同研究については、今年度に引き続き、共同研究の論文化・公刊を継続して進める。共同研究先(ALSPAC,MRC,Fordham大学)と定期的にウェブミーティングを実施し、進捗確認とディスカッションを行う。ALSPACチームとは、クロスコホート研究を進め,社会を変数として捉えたうえで,社会が個人の価値形成に与える影響について検証を試みる。リカバリー研究については、「思春期精神病理における主体価値の不調からの回復過程の質的研究」について、国際誌への投稿・公刊を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症により、当初予定していた、若手の米国ハーバード大学派遣による国際共同研究が行えなかったため、2021年度に延期して行う。
|