研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
16K21733
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塩谷 光彦 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60187333)
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研究分担者 |
寺西 利治 京都大学, 化学研究所, 教授 (50262598)
植村 卓史 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (50346079)
君塚 信夫 九州大学, 工学研究院, 教授 (90186304)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 配位アシンメトリー / キラル金属錯体 / 多核金属錯体 / 非対称配位圏 / 非対称構造 |
研究実績の概要 |
新学術領域研究「配位アシンメトリ」は、錯体化学において未開拓であった金属中心の非対称配位圏の設計・合成法と異方集積化法の新しい学理を確立することを目的としている。この新領域が広く普及するためには、国際的な異分野交流やネットワーク形成により国際活動を推進する必要がある。2020年度はこれまでに構築してきた国際融合バーチャルラボの協力体制の下に、研究活動を推進した。例えば、領域代表者の塩谷は「キラル@メタルラボ」において、2019 年度に中国の清華大学から招聘した2名ポスドクを雇用し(うち1名は昨年4月に特任助教に着任)、キラル@メタルクラスターという新しい炭素中心金クラスターのキラリティー構築を展開してきた。さらに中国人留学生3名を研究室に配属し、前例のない四面体金属錯体のキラル@メタルの化学に挑戦した。ドイツのマールブルク大学ともメールによる研究交流を継続している。これらの研究成果はNature Communicationsなどの著名な国際学術誌3報に発表し、現在も論文投稿の準備を進めている。2020年度は新型コロナウイルスの感染症の影響により、当初予定していたPacifichem 2020のCoordination Asymmetryセッションも2021年度に延期となっているが、国内外からの多くの発表申し込みがあり、この新しい学術領域が普及しつつあることを認識することができた。さらに、本領域の多くの研究グループにより、本新学術領域研究の多くの研究成果がオンライン(国際)会議で発表された。オンライン国際会議の経済的支援も行った。大変残念ながら、2020年度も新型コロナウイルスの感染症の影響で、様々な国際交流や公開シンポジウムの予定が延期あるいは中止になったが、その状況に合わせた形で国際的に情報交換を行い、一定以上の研究成果や国際ネットワークの構築が実現された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は引き続き、配位アシンメトリーに関する国際共同研究を推進し、本領域の普及化と国際活動のための支援体制強化を図った。具体的には、以下のような研究活動を継続的に行った。 (1) 融合バーチャルラボの継続とネットワークの活用:高度な融合研究を推進するバーチャル研究組織として設置した「融合バーチャルラボ」を継続的に推進した(国内: 「キラル@発光ラボ」等、国際:「キラル@メタルラボ」)。 (2) 融合基礎・実習コースによる若手研究者の育成:本領域の研究者が講師を務め、配位アシンメトリーに関する実験・理論・計測の基盤・最先端技術や情報を、オンライン勉強会において若手研究者や大学院生に提供した。 (3) オンライン国際会議の人的・経済的支援を推進した(例:第1回アジア分子磁性国際会議(ACMM2020)等)。 2020年12月に米国ホノルルで開催予定の環太平洋国際化学会議(Pacifichem)にセッション(Coordination Asymmetry)を企画し、日本化学会に採択され、配位アシンメトリーに関連する広い分野をカバーするよう、最先端の研究者や新進気鋭の若手研究者を招待した。また、同年9月に日英合同シンポジウムを企画したが、新型コロナウイルスの感染症の影響を考慮して、1年後に開催することを決定した。このように2020年度は、新型コロナウイルスの感染症の影響で、様々な国際交流や公開シンポジウムが延期あるいは中止になり、対面による効果的な国際交流の機会は失われたが、この状況に合わせた形で多くの研究者の間で情報交換が行われ、一定以上の研究成果や国際ネットワークの活用が実現された。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、 (1) これまでに築き上げてきた国際共同研究や国際融合バーチャルラボのネットワーク内の研究交流、およびネットワーク間の融合を強力に推進するための支援を行う。第II期の公募研究者が国際ネットワークを最大限活用できるよう、国際活動の状況を速やかに周知する。 (2) 海外研究者による配位アシンメトリーに関する実験・理論・計測に関する国際融合基礎・実習コースをさらに強力に推進し、若手研究者や大学院生の育成を図る。 (3) 本学術領域の研究成果を、Website、News Letters、日本化学会の国際誌のCoordination Asymmetryサイトにより周知し、配位アシンメトリーの基礎概念や最先端研究を国際的に発信する。また、国際学術誌の総説や著書として、研究成果を取りまとめ、本領域の研究概念の普及化やさらなる発展を図る。 (4) 国際公開シンポジウムの主催、および国際学会および国内学会の共催・協賛を可能な限り推進し、本領域の普及と発展を図る。 今後、新型コロナウイルスの感染症の影響が予想できない面もあるので、オンライン会議を活用し、国際活動の支援と継続したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2920年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた国際共同研究や国際会議開催のための海外出張や、国外研究者の招聘などが、中止あるいは延期になったため、次年度使用が必要になりました。2021年度も、この状況がどのように変化するかが予想できない面もあるので、代替の方法で積極的に国際活動を推進したい。
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