研究領域 | 生物の3D形態を構築するロジック |
研究課題/領域番号 |
15H05856
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
近藤 滋 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10252503)
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研究分担者 |
芳賀 永 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 教授 (00292045)
秋山 正和 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (10583908)
松本 健郎 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30209639)
上野 直人 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 教授 (40221105)
松野 健治 大阪大学, 理学研究科, 教授 (60318227)
武田 洋幸 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80179647)
井上 康博 京都大学, 再生医科学研究所, 准教授 (80442929)
大澤 志津江 京都大学, 生命科学研究科, 講師 (80515065)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 形態形成 / 発生 / 3次元 / 数理モデル / 工学 |
研究実績の概要 |
27年度に行った主な事業は以下のとおりである。 共通研究機器の購入 *武田研究室は計画研究としてZeiss L1ライトシート顕微鏡を導入した。この顕微鏡で取得される画像の解析と、ここで開発される解析手法を班員と共有するため、画像解析用ワークステーションを購入した。これにより、数GB~数TBにおよぶ画像データの処理が格段にスピードアップし、短時間のうちに組織に含まれる全細胞(最大数百個)の動態を数時間にわたって追跡することが可能となった。これらのデータを用い、班内の数理チームと共同して、特定の組織の3D形態形成をin silicoで再現することが可能となった。 *秋山研究室で3Dプリンターと3D解析ソフトを購入した。この3Dプリンターは、班員すべてに公開されており、研究データの3Dプリントがオンラインでオーダーできるようになっている。*名古屋工業大(現名古屋大学)の松本研での超音波ステージの購入。この機材は胚などをレーザーで切断し、断面にかかっていた張力等を測定するものであり、既に複数の実験系グループによる依頼に応じている状況である。 HPの作成 *共通機材のオンライン予約や3Dプリント等の依頼、さらにデータ共有のためのストレージ機能など、班全体をあたかも一つの研究所として動かせるマルチ機能のHPの作成を目指した。すでに稼働しており、一定の機能は果たしている。 班会議と合宿 *本新学術班の特徴は、班会議のほかに、合宿と名づけた勉強会を行うことで、理論系と実験系のミックスを意図的に進めることである。27年度は、3月に京都で行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
総括班として最大の目的は、班員間の共同研究の促進、特に実験系と、数理工学系を融合させることにより、研究活動を効率よく行わせることであるが、現時点までのところ、総じてうまくいっている。共通機器に関しては、特に利用率が高いのが3Dプリンターであり、多くの研究グループが、北海道大学に依頼し、3Dサンプルの打ち出してもらっている。これには、秋山研における人的な作業が必要になるが、その人件費を総括班費から支出できているため、問題は起きていない。また、秋山研では、他の実験系グループの研究員を集めての、3Dソフト講習会、実験に役立つ基礎数学講習会などを開いており、これも班員相互の交流に貢献している。松本研でも、多くのグループ用に特殊な実験装置を作成、データ取得協力を行っており、ほぼすべての研究グループが利用している状態である。このような良い状態を生んでいる理由は、そもそも、本新学術班の成り立ち自体が、研究を進める上での必要性から集まった研究者集団であったからであり、ある意味、当然ともいえる。今後、この状況を、公募班員すべてに広げていくことが重要であるが、そのためにも、もっとHPの充実と活用を広げていきたい。HPのカスタマイズは実のところ、機能を充実させようとすれば、それだけ費用がかさむので、今後は総括班費の残高との折り合いが重要になるが、研究室内にITのエキスパートを育てえるなどして、何とか対応したい。また、公募班員が参加することにより、合宿参加者が大人数になり、当初のような突っ込んだ議論がやりにくくなっていることも今後の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
研究班の運営は、総じてうまくいっているため、大きな方針変更は必要がない。しかしながら合宿の運営が、公募班員の人数が増加したことにより難しくなっていることから、何らかの改善が必要と考えている。また、この新学術領域はあと3年で終了するが、この枠組みが継続できるように、何らかの策を考え、実行していきたい。 合宿は、もともと、実験系の研究の進行状況を説明し、理論系が助言を与える、というスタイルで始まったものである。有効な助言を与えるには、実験の詳細にわたって熟知する必要があり、そのため、議論の時間が長くなるとともに、大人数では、議論に参加しない人が大多数になり議論の密度が下がってしまう。解決法としては、合宿の回数を増やし、代わりに参加人数を20名程度に減らすことが有効であるが、適当な参加者を選ぶコーディネーターが必要になり、そのためにエフォートを割けるかどうかが問題となる。29年度は、一回目の合宿を従来通り、2、3回目は人数を絞って行うことで、うまく機能するかどうかを確かめたい。 新学術による支援が終わった以降も、おそらく、計画班員間の研究交流は続くことは間違いない。班会議、合宿と、総括班によるサービスが提供できなくなるのが問題であるが、班会議、合宿は、各自の研究費の持ち寄りで何とかなると思われるので、残る問題は、HPの維持と、工学・数理系サービスの提供である。HPの方は、高いレベルで完成させてしまえば、維持費は少額で済むと思われるので、今後も完成度を高めることに努力したい。工学・数理系のサービスは、担当者のエフォートがかなりの規模で発生するため、何らかの経済的な支援が必要になる。新学術以外で、そのような支援を期待できそうな公的な研究費は現時点では無いため、グループを維持するには、民間の研究費に応募することが必要になる。今から準備することで、切れ目なく研究活動を維持したい。
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