研究実績の概要 |
本新学術領域「加速宇宙」研究では、天文学と物理学の融合研究で、また理論、実験と観測を包括的に用いた手法で、宇宙膨張の加速の原因を究明、また加速膨張に逆らって銀河・銀河団などの宇宙の構造の形成を引き起こすダークマターとの引力のせめぎ合いを理解することを目的とした。 最終年度の主な領域全体の成果は以下の通りである。(1) 究極理論班大栗らが、超弦理論の枠組みで、重力理論を整合的に量子理論に組み込むことはできないという「swampland」問題を提唱し、業界に活発な議論を巻き起こした(Ooguri et al. 2019)。領域の研究者らも、swampland問題が帰結する、インフレーション、ダークエネルギーの性質を明らかにし、その後の観測可能性を議論した(Chiang, Leedom, Murayama et al. 2019)。(2) すばるHSCの大規模データの重力レンズ効果の精密な測定結果を用い、宇宙モデルを制限し、ダークエネルギーの性質についても知見を得た(Hikage et al., including H. Murayama, M. Takada, 2019)。日本が主体となりリードする国際共同研究による精密宇宙論の幕開けである。(3) 宇宙初期の加速膨張インフレーションの物理機構により生成された可能性がある原始ブラックホールは、ダークマターの有力候補である。すばるHSCのアンドロメダ銀河のデータを用い、重力マイクロレンズ探査を行い、太陽系小天体の質量程度の原始ブラックホールの存在量について世界で初めて制限を得た (Niikura, Takada et al. 2019)。(4) 本領域の研究者が中心に推進する次世代宇宙背景放射衛星計画LiteBIRDが、次期戦略的中型2号機の計画に選定された。この他にも公募研究による共同研究、また多くの若手研究者の育成が進んだ。
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