総括班
抗原ペプチド-MHC複合体が、従来知られていたものとは異なる構造をとることがわかり、免疫疾患発症の引き金となっている可能性が見えてきた。すなわち、抗原-MHC複合体の質的・量的な変化によって引き起こされる免疫応答は従来の「セルフ」、「ノン・セルフ」という抗原分類の枠組みに入れることができない。そこで、本領域では抗原提示細胞が発現する抗原を従来の「自己(セルフ)」および「非自己(ノン・セルフ)」の枠組みによって分類するのではなく、それに替わる新たな概念「新規自己(ネオ・セルフ)」を提案します。この新たな概念を適用することによって、これまで不明であったMHCと疾患感受性の謎、自己免疫疾患やアレルギーの原因などが明らかになってゆくプロセスを明らかにすることが本領域における研究目的である。そのためには免疫学研究者だけではなく、構造生物学、生化学、ゲノム科学、イメージング科学、インフォマティクスなど幅広い分野の研究者の英知を結集して問題解決に取り組む体制の構築に努めた。本総括班では研究試料や技術の共有化、高額な設備備品(全反射顕微鏡や高速シークエンサー等)については管理者を定め、先端精密機器の使用にかかるストレスを大幅に軽減し、研究の進展を強力にサポートする体制に取り組んだ。 さらに、班会議の開催やホームページを開設し、本領域の活動を周知するよう努めた。平成29年1月にはキックオフシンポジウムも開催した。他方、本領域の方針として、ネオ・セルフを構成するペプチドは外来性か内在性か、ミスフォールド蛋白はどのような細胞由来かを含めたネオ・セルフの生成、および結晶構造、そして免疫学的機能を構造生物学、ゲノム科学、進化生物学の光を当てながら研究を取り進めることを班員が確認した。
2: おおむね順調に進展している
既に総括班で取り組むべき全反射顕微鏡のセットアップは完了し、また領域のホームページ(日本語版・英語版)の公開も完了している。班会議も開催した。アドバイザー(研究協力者)も3名を配置した。
本新学術研究 領域の総括班では、以下の運営方針に従い「ネオ・セルフ」を統合的に研究する。1)総括班会議:年度内に1~2回開催し、研究連携、研究マネジメント、成果発信などに関する企画・運営事項を決定し、領域研究の円滑な推進を図る。2)全体班会議:口頭発表および若手研究分担者による発表を通じて班員相互の情報交換と共同研究を促進する 。 3)ホームページを通じて研究成果や班会議等の情報を公開するとともに、ニュースレターによって班員の成果や意見を広く社会に情報発信する。 4)実験材料・情報を共有し、班員の交流を積極的に支援する。さらに、アドバイザー(研究協力者)からのコメントを班員に周知する。5)社会貢献活動を通じ、広く社会に研究活動をアピールする。6)若手研究者主催のシンポジウム:若手研究者がシンポジウムを企画・主催し、若手研者間の人的・学術的交流を促進する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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