総括班
生体のシグナル伝達は、外部環境の変化に適応して人体の恒常性維持を司る根源的な生命応答システムであり、またその破綻が疾患発症の原因となる。近年の遺伝子・蛋白質解析技術の発展に伴って、細胞内のシグナル伝達は活性化・不活性化による単純な一次線形的反応ではなく、シグナルの時空間制御や正・負のフィードバック、クロストーク等を含む複雑な高次非線形反応であり、この多様かつ動的な反応様式こそが、生命機能制御の根源的メカニズムである事が明らかにされてきた。しかしながら、シグナル伝達システムの制御機構には未だ不明な点が多い。生体内の情報伝達ネットワークに関する多様かつ膨大な情報を統合して、細胞や人体をシステムとして理解するには、シグナル伝達を数式に変換し、コンピューターを用いてその動的反応様式を包括的に解析する数理科学的手法の導入が必要不可欠である。また癌を始めとする難治性疾患に対し、真に有効な治療法を開発する上でも、数理科学を用いてよりグローバルな視点から生体内の情報フローを整理し、創薬の標的となる重要分子や経路を見付け出す必要がある。本領域では、生命科学研究者および数理科学研究者が連携して、細胞内シグナル伝達ネットワークと生命機能制御の基本原理、およびその破綻がもたらす疾患を統合的に解き明かす新たな学術分野「数理シグナル」を創出することを目標とする。また、近年特に発展の著しい、オミクス解析、分子イメージング技術や、数理科学分野の新たな技術・方法論を導入して「実験」と「理論」を融合させることにより、細胞応答を高精度に予測し、生命機能制御や疾患治療の鍵となる重要分子を抽出する新たな生命動態解析技術・理論を確立する。総括班が推進する本研究課題では、異分野連携・協働研究を効率よく生み出し、深化させる為のシステムを構築した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画に従って、計画班合同会議による研究計画の策定、若手研究者派遣による共同研究を深化、領域外の関連分野専門家も含む公開シンポジウムの開催、若手研究者主体のポスター発表会(若手研究交流会)、ホームページ上でのWeb討論・情報交換ページの設置、異分野相談窓口担当者の決定および設置、ニュースレターの作成、アウトリーチなどの活動を着実に実行した。
公募班員が参加する次年度以降は、領域推進会議、若手ワークショップ、数理解析講習会や、技術講習会を積極的に開催して、領域内での連携を深化させ、異分野間の共同研究を推進する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 4件、 招待講演 9件) 備考 (1件)
Nature Commun
巻: 7 ページ: -
10.1038/ncomms10252
Cancer Res
巻: 76 ページ: 2612-2625
10.1158/0008-5472.CAN-15-1846
Proteomics
巻: 16 ページ: 1825-1836
10.1002/pmic.201500494
Methods in Molecular Biology
巻: 1487 ページ: 99-111
10.1007/978-1-4939-6424-6_7
生物物理化学 電気泳動
巻: 60 ページ: 7-10
10.2198.electroph.60.7
巻: 60 ページ: s24
http://math-signal.umin.jp/