研究領域 | トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現 |
研究課題/領域番号 |
17H06340
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山口 真美 中央大学, 文学部, 教授 (50282257)
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研究分担者 |
渡邊 克巳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20373409)
田中 章浩 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (80396530)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 実験系心理学 / 認知科学 / 哲学 / 文化人類学 / 顔学 |
研究実績の概要 |
本研究領域は、心理学・文化人類学・哲学といった既存の研究分野の枠組みを超えて、さまざまな文化の中での顔と身体表現に関する共通性と異質性を、個人内・外・間という3つのレベルで多層的にあぶり出し、意識化されない部分を解明して呈示することにより、文化によって得られた、あるいは失われた他者理解の在り方を再構築し、東アジア文化圏に位置する我が国から人文・社会科学領域として新たな研究領域を構築する試みである。異文化比較を前提とする研究の性質上、フィールドワークに基づいた文化差比較や異文化間での実験の実施、さまざまな文化的視点からの現象学的分析を行う必要があり、また研究領域の国際的プレゼンス向上と国際共同研究の発掘・発展に向けて、国際活動支援班を設けた。 2018年度は、領域主催(共催)イベントや施策を多数実施し、領域からの研究成果の発信に注力した。中でも、2019年3月に開催した国際シンポジウム「トランスカルチャーとはなにか?ー心理学と哲学の協働」では、かねてより課題だったトランスカルチャー状況の定義について、プロジェクションマッピング、トランスジェンダー等の具体例を心理学的、哲学的、文化人類学的視点から論じ、領域としてトランスカルチャーをいかに定義づけるかを議論するよい機会となった。本企画は、同じく新学術「多元的質感知」領域との共催だったことを報告しておく。 領域運営面では、年2回の領域会議と数回の総括班会議を開催し、領域内の情報共有化と交流の円滑化を図った。領域ウェブサイトやSNSを通じて、領域関連の研究成果やニュース等を広く一般に告知した。若手研究者支援としては、心理班合同WSの開催、領域会議での若手ポスター発表賞の授与等を実施した。 また、国際活動支援についても海外の第一線の研究者との国際共同研究遂行に必要な機器の購入、ミーティングの実施などに継続的に支援を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に計画していたイベントや施策については、概ね実施することができた。情報発信のためのシンポジウムやワークショップについては、1)複数研究項目の共催によるイベント(国際シンポジウム、哲学カフェ等)9回、2)各関連学会(日本神経科学会、日本心理学会、日本顔学会、日本文化人類学会等)の総会における顔身体学企画シンポジウム4回、3)日本かがく未来館でのトークイベント1回、4)若手研究者企画のイベント(心理班合同国際WS等)2回。中でも、2019年3月に開催した国際シンポジウム「トランスカルチャーとはなにか?ー心理学と哲学の協働」では、かねてより課題だったトランスカルチャー状況の定義について、プロジェクションマッピング、トランスジェンダー等の具体例を心理学的、哲学的、文化人類学的視点から論じ、領域としてトランスカルチャーをいかに定義づけるかを議論するよい機会となった。 領域運営面では、年2回の領域会議の開催により、領域関係者間の情報共有、研究交流の円滑化を図った。また、領域HP、SNSを通じた社会一般への情報発信、ニュースレター第2号の発行等を行った。 国際共同研究活動についても継続的に支援し、先方都合で未実施となり繰越申請を行った国際共同研究についても、2019年度中に具体的な実験計画をたて、実験に必要な機器の整備を行い、現在に至っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も異なる学術分野間の交流を深め、本領域の指針であるトランスカルチャーと、トランスカルチャー状況下での顔・身体の役割についての議論を進める。また、本領域の重要性を広めるため、関連学会において学術分野を超えた交流を示し、さらに若手研究者を対象に本領域のプレゼンスを深めるための各種イベントを開催し、人文社会科学における魅力ある学術領域の一つとなることを目指す。 海外との交流を基盤とした2020年度の計画の実施にあたり、コロナウィルス感染症の影響を回避する手段を講じることが必須である。海外渡航制限や国内移動制限により、海外研究拠点との交流や領域内交流は極めて制限されることから、インターネットを介した交流を進める必要がある。ウェブによる情報発信の場を提供することにより、異文化比較の調査データ・実験データを今年度中に取ることの叶わない研究者のために、業績を作る場を提供する。過去行ってきた若手の研究交流支援については、そのままの形で持続することが難しいこともあり、彼らに自宅での研究の準備や新たな知識を提供する場をインターネットにより提供する。 また、以前から行ってきた国際交流をさらに活発化させるためにも、インターネットによる情報交換の場を設け、感染症収束後に調査や実験が再開された際、迅速にデータを取得するための準備期間としていく必要もある。 尚、本領域を世界に発信する試み(ワークショップやシンポジウム)についても、インターネットを介した会議の場においてさらに推進していく。 2019年度にコロナ感染症問題で延期となった国際シンポジウム(インドネシア科学院とジャカルタで行う予定だった国際シンポジウムと東京で行う予定だったミックスレイスの国際シンポジウム)は、感染症問題が解決した後に仕切り直すが、それによって多様な地域での国際イベントの展開をベースとした海外との共同研究の関係を構築していきたい。
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