研究領域 | トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現 |
研究課題/領域番号 |
17H06340
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山口 真美 中央大学, 文学部, 教授 (50282257)
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研究分担者 |
田中 章浩 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (80396530)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 実験系心理学 / 認知科学 / 哲学 / 文化人類学 / 身体性 |
研究実績の概要 |
2020年度はコロナ禍中での研究遂行となったが、各研究班が柔軟に対応し、オンラインを駆使して研究を進めることができた。また取得済みのデータの解析を進めるなどし、研究成果につなげることを目指した。年2回(6月、12月)の領域会議もすべてオンライン開催となり、zoom、slack、gathertown等オンラインアプリを駆使して口頭発表、ポスター発表ともにスムーズに行うことができた。特にslackを用いた質疑応答は、会議終了後も延々と議論が続くなど、活発な研究交流の場となった。顔と身体を扱う領域のため、コロナ禍でのマスクによる顔認知の変化やオンライン会議における二次元顔コミュニケーションの影響等、マスコミからの問い合わせが格段に増え、領域関係者のメディアへの露出が増えた。また、コロナ禍で領域関係者が感じたことを一般向けにブログ化し、発信した(後に「2020年コロナの記録-顔・身体学から』と題した冊子にとりまとめた。)。 領域全体による大きな研究成果として、領域関係者多数が関わり執筆、編纂した「顔身体学ハンドブック」(東京大学出版会)が刊行されたことが挙げられる。 コロナ禍以前は頻繁にあった海外との往来がほぼなくなり、国内でできることを手探りで模索しながら始めたのが、心理学、哲学、文化人類学それぞれの研究手法について勉強する機会を設けたことである。これによって若手研究者のみならず、領域関係者の多くが各分野についての理解を深め、さらなる融合研究が生まれるきっかけとなった。オンラインでの若手研究会もシリーズで開催し、多くの参加者による活発な議論が行われた。 国際イベントについても、昨年度から延期された2件を含む3件をオンライン開催することができた。また、ポストコロナ時代を見据えた身体の未来像について考えるシンポジウムシリーズを企画・開催、また障害と身体性についてもシンポジウムを開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍中の年度となったが、オンライン化を効率よく取り入れ、計画していた研究成果発表イベントについてはほぼすべて実施することができた。若手研究者育成を念頭に置いた、様々な勉強会・研究会についても予定通りオンライン開催することができた。東京オリパラ直後ということもあり、身体性についての公開シンポジウム「シンクロする身体」を開催し、元トップアスリート2名を招きポストコロナ時代を見据えた身体の未来像についてディスカッションを行った。 海外との交流についても、実際の渡航は叶わなかったが、適宜オンラインでミーティングを重ね、実験内容を工夫するなどして、かなりの部分は支障なく研究を進めることができた。また国際シンポジウムについても、2019年度に予定していて延期された2件についてはオンラインで実施した。「ミックスレイスシンポジウム」はオンラインかつ通訳付きというかなり難しい運営となったが、大きな問題もなく、無事に終えることができた。 アウトリーチの面では、マスク着用による乳幼児の顔認知や言語発達への影響について等、領域代表をはじめとする領域関係者のメディアへの出現が頻繁になることによって、広く一般に向けて顔・身体学の認知度を高めることができた。 「顔・身体学ハンドブック」(東大出版会)の刊行により、新しい学問分野としての顔・身体学の確立に貢献できた。 哲学班中心に開発した、顔身体アプリ(動画映像解析ソフト)を、より使いやすくアップデートし、動画解析を研究で必要とする班と共有できるようにした。また、顔と身体を研究対象とする領域のため、研究を遂行する上で必須と考えられる研究倫理(無意識の差別や偏見の排除)について、わかりやすく纏めたビデオ教材を制作し、まずは領域内の研究倫理教育に活用した。将来的には、領域外でも使えるようにしていく計画で進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度予算による計画の執行についてはすでに終了しているが、2021年度予算については相当額を繰り越しており、2022年度には、今までの領域全体に係る研究成果を広く一般に、また国際的に発信していく施策を企画、実施していく予定である。コロナ禍が続く限り、海外との交流がどこまで可能になるか不透明な部分も残されているが、できる範囲、できる方法で、顔・身体学という新しい学問分野の確立とプレゼンスの向上を目指し、国内外への発信を試みたい。
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