研究領域 | 重力波物理学・天文学:創世記 |
研究課題/領域番号 |
17H06357
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 貴浩 京都大学, 理学研究科, 教授 (40281117)
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研究分担者 |
固武 慶 福岡大学, 理学部, 教授 (20435506)
田越 秀行 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (30311765)
向山 信治 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (40396809)
大向 一行 東北大学, 理学研究科, 教授 (70390622)
河合 誠之 東京工業大学, 理学院, 教授 (80195031)
吉田 道利 国立天文台, ハワイ観測所, 教授 (90270446)
ヴァギンズ マーク 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (90509902)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 宇宙物理学 / 重力波 / ブラックホール / 中性子星 / 超新星爆発 / 重元素合成 / 重力理論 / 星形成 |
研究実績の概要 |
2017年度にスタートした本新学術領域は,この好機を活かすために,重力波データ解析,対応天体観測,理論的研究が連携するすることで,重要な成果を挙げるとともに,将来を担う若手研究者の育成をおこない,この新しい学問の創世をリードすることを目指すものです.3回目の重力波本格観測がおこなわれ,多数の連星合体イベントが報告されており,本領域でも関連する研究が進展しました. 例を挙げると,注目されていた合体後に生成されるブラックホールからのこだま的な重力波について,非物理的なテンプレートに対する解析では何らかの弱い信号があることを示唆するが,ブラックホール近傍が反射壁となっているという仮説を支持するものでないことを独自の解析で明らかにしました.また,連星中性子星合体からの重力波解析では,独自の高精度な数値相対論重力波波形モデルを用いた潮汐変形率解析から中性子星の潮汐変形率に関して現時点でのデータに対しては数値計算のモデルによる差異が統計誤差の範囲であることを明らかにしました. 他にも大きな進展として,超新星爆発に関して本領域が取り組んでいる水チェレンコフ検出器にガドリニウムを溶解させることで反ニュートリノの識別能力を大幅に向上させる手法のスーパーカミオカンデへの導入が着々と進んでいます.ガドリニウム溶解により,超新星起源の背景ニュートリノ信号を数万倍以上もある宇宙線起源の雑音から識別可能になり,背景ニュートリノ検出の実現に大きく近づきました. 理論的な研究においても、連星形成や超新星爆発のシミュレーションの進展など多くの成果が挙がっています, このような研究面での進展に加えて,領域から多数の若手研究者海外派遣を行い積極的な若手人材育成を進めてきました.派遣の総数は15名を数え,その成果は領域HPに報告されています.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
領域の発足直後に,LIGO/VirgoによるGW170817の発見があり,その後,2019年度から2020年度にかけて3回目の重力波本格観測が行われました.この観測の最後には日本のKAGRAも観測を開始しました.これまでに得られた連星合体イベントの数は50を上回り,これらのデータを用いた様々な議論が可能になってきています.これにより,多くの科学的成果が本領域から発信されました。本年度も上記に示した以外にも、重力波観測から派生する多くの研究成果が得られています。特に計画研究の枠にとらわれない連携研究でも多数の成果を挙げています。 これらの成果はProg. of Theor. and Exp. Phys.の特集として,重力波物理学・天文学の進展について本領域メンバーが中心となったレビュー論文を執筆し掲載が決定しています. また、1)Third Annual Area Symposium,2) Area Workshop 2020 Winter,3) The 29th Workshop on General Relativity and Gravitation in Japan, JGRG29(協賛), 4) 4M-COCOS: Multi-dimensional Modeling and Multi-Messenger observation from Core-Collapse Supernovae 5) Area workshop 2019 Early Summer等の多数の研究会を主催し、ニュースレター3号も発刊しました。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な方針に変更はありません。 今後も、計画研究をまたぐ研究会などを組織して、計画研究間の連携と相互批判をより密接におこなっていきます。とりわけ、先進的な重力波データ解析手法の開発実装において世界に先駆けた研究成果を挙げることは、本領域の目玉のひとつである。この分野は組織的な取り組みなしに大きな成果を期待することが特に難しい分野です。今後LIGO/VirgoとKAGRAの連携が進む中で、共同の論文執筆という方向に向かうと思われますが、その中でも存在感を示すことのできる成果が挙がるように領域を挙げて取り組んでいきます。 総括班による国際活動としては、2019年度は8件の海外からの招聘、9件の派遣を総括班としておこないました。6件の国際活動報告記事を新たにWeb上に掲載しました。現在コロナ禍のために派遣招聘が行えない状況が続いていますが、新しく始めたウェビナーシリーズ、および、オンライン開催による領域ワークショップを通じて領域の活性化に努めていきたい。
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