研究領域 | 水惑星学の創成 |
研究課題/領域番号 |
17H06454
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関根 康人 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60431897)
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研究分担者 |
渋谷 岳造 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, 研究員 (00512906)
臼井 寛裕 東京工業大学, 地球生命研究所, 特任准教授 (60636471)
福士 圭介 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 准教授 (90444207)
玄田 英典 東京工業大学, 地球生命研究所, 特任准教授 (90456260)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 個体惑星・衛星・小惑星 / 地球惑星物質 / 宇宙・惑星化学 / 地球化学 |
研究実績の概要 |
総括班・国際活動支援班の研究計画は、1)A01,A02,A03研究班の融合による「水・物質循環理論モデル」の構築、2)B01,B02班の実証ツールの構築、3)本領域研究に資する若手研究者の育成、そして4)火星や小惑星、氷衛星の国際的な探査ネットワークの構築である。 1)、2)については、まず平成29年8月に金沢大学においてキックオフ・ミーティングを開催した。全体会では、領域の全体目標、ロードマップを確認した。また、計画研究班間の有機的な連携構築のため、複数の連携会議を行った。具体的には、太陽系天体における水質復元、化学反応プロセスの指標となるプロキシ開発、水・物質循環モデル構築に関連した連携会議を行い、分野融合を進めた。 同年12月には、宇宙科学研究所において、国内外の小天体探査に関わる研究者を集め、国際マルチスケールワークショップを開催した。ここでは、小惑星、火星、氷天体で生じる水・物質循環を俯瞰的な視点でとらえ、太陽系天体で起きていた水・物質循環の統合的理解を目指した活発な議論を行い、国際協力体制の構築を行った。 平成30年2月に東北大学において、惑星圏研究会・水惑星学セッションを開き、初期火星における水環境の復元、気候、大気進化について総合的議論を行った。 同年3月には名古屋大学で、初年度の総括と次年度計画を話す総括班会議を行った。 3)、4)としては、火星周回機の分光観測チームのあるカリフォルニア工科大に若手研究者を派遣し、国際探査データの解析トレーニングを受けた。帰国後、この研究者を中心として、ノウハウを国内の若手や学生へと伝えるミーティングを行い、多くの若手研究者が国際探査データの解析を自在に行うことが可能となった。また、火星気候・水循環モデルの共同開発(ハーバード大学)や、火星アナログ環境調査(モンゴル国際大学)を国際共同で推進することでネットワークを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体会や計画研究連携会議を通じて、当初の予定通り、小惑星や火星の水・物質循環の理解に向けた、地球化学・地質学と惑星科学・天文学の融合を推進し、例えば、微惑星内の水環境や、初期火星表層環境の理解について、水の存否だけでなく、その化学組成に迫る成果を生み出す土台を作った。さらに国際活動支援については、当初の計画に加えて、若手育成を含めた予想以上の進展も見られたので下に詳細を記す。 まず、小惑星における水・物質循環の理解に関しては、次年度に目標天体に到着予定である我が国の探査機はやぶさ2と米国のOSIRIS-RExの主要研究者を集めた国際ワークショップを主宰した。これによって、小惑星探査という貴重な機会を有機的に結び付けることに成功しただけでなく、化学的に多様な小惑星を統一的に理解する議論を大きく進めた。このワークショップには、若手研究者も多く参加し、国際共同研究や若手育成の機会になった。 火星・氷天体における水・物質循環の理解に関しては、火星に到着しているNASAの周回機、着陸機の国際探査解析チームに若手研究者を送り込み、チームメンバーとなることで、当初の計画通りその解析ノウハウを習得した。さらに国内の若手にノウハウを伝えることで国際探査データを使って研究を自由に展開する礎を作った。 水・物質循環モデルの開発については、本領域で開発しつつある水循環モデルと、海外で開発された大気気候モデルを統合する国際共同研究を主導した。これによって、表層に残された物質的証拠から、水質の復元だけでなく、当時の気候や大気の復元につなげるという、これまでなかったサイエンスの展開が可能になった。さらに、これら初期火星に関する研究が予想以上に進展したため、当初の予定外として、地球上の火星アナログ環境(モンゴル国、ゴビ砂漠)の国際共同調査が開始した。このように分野融合と国際共同を、極めて順調に推進している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には、探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウに到着し、リモートセンシング観測を開始するため、これによって取得する観測データの解釈と、かつての微惑星内部での水・物質循環の復元を迅速かつ効果的に行う体制の強化を行う。これをもとに、領域全体の中間目標 である「微惑星における水・物質循環理論モデルの構築」を達成する。 また、国際スクールを開催することで水惑星学研究者の育成を図る。具体的には、昨年度に連携関係を構築したMars Reconnaissance Orbi terの赤外分光チームの Bethany Ehlmann (カリフォルニア工科大学)、火星気候モデル研究を進めている Robin Wordsworth (ハーバード大学) を始めとする世界をリードする火星研究者たちを招聘し、国内外の博士課程学生を対象とした国際スクールを開催する。 国際活動支援としては、継続的に小惑星と火星に注力して探査及び分析ネットワークを構築する。具体的には、小惑星探査においても、米国のOSIRIS -REx探査との連携を強化し研究員の相互派遣を行う。また、微小試料分析については、Technical Univ. Denmarkの研究者を招聘して、放射光施設を含めた共同研究体制を構築する。これらによってはやぶさ2探査とのデータの交換や、個々の小惑星を超えた普遍的な微惑星の水・物質循環の理解を推進する。 これらの研究成果をもとに、平成31年度以降火星や氷衛星へと研究を本格展開し、また構築した理論と実試料による実証を連携させることで両輪体制を構築する。最終的には天体ごとに得られた知見を統一的視点で体系化して、水惑星の形成・進化論に基づく「水惑星学」を創成していく。
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